出版社内容情報
「限界集落はどこも消滅寸前」は嘘である。危機を煽り立てるだけの報道や、カネによる解決に終始する政府の過疎対策の誤りを正し、真の地域再生とは何かを考える。
内容説明
高齢化が進み、いずれ消滅に至るとされる「限界集落」。だが危機を煽る報道がなされているのに、実際に消滅したむらはほとんどない。そこには逆に「限界集落」という名付けをしたことによる自己予言成就―ありもしない危機が実際に起きる―という罠すら潜んでいる。カネの次元、ハードをいかに整備するかに問題を矮小化してきた、これまでの過疎対策の責任は重い。ソフトの問題、とりわけ世代間継承や家族の問題を見据え、真に持続可能な豊かな日本の地域社会を構想する。
目次
序 むらは消えるか―東日本大震災を経て
第1章 つくられた限界集落問題
第2章 全国の過疎地域を歩く
第3章 世代間の地域住み分け―効率性か、安定性か
第4章 集落発の取り組み
第5章 変動する社会、適応する家族
第6章 集落再生プログラム
著者等紹介
山下祐介[ヤマシタユウスケ]
1969年生まれ。九州大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程中退。弘前大学准教授などを経て、首都大学東京准教授。専攻は地域社会学、環境社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
47
初読。限界集落の定義は何かというところから始まり、時代の変遷、世代による育てられ方の違いなどと続く。「帰ってこいと言っていい」、この発想が今までなかった親世代、そして子ども世代。2013/09/27
よこしま
32
結論的に著者の考えだけではまだ何が真実だとか見えない。◆確かに“限界集落”という語彙自体がメディアが作ったもので、政治が絡んでいるのも分かります。実際には、災害などで集落の世代が若い頃に近隣都市に、新たな集落を作ったともありますし。また子息たちが近くにいて戻ってこれるとも。ならば孫の世代は戻ってくるのか?◆著者は集落の人たちが問題ないと。が金子勝氏の著書だと医療費の負担で自治体が破綻寸前とも。◆自分で見ていて都市部でも高齢によるゴースト化が見えます。少子化、東京一極化、TPPなど考えると多くの本が必要。2015/03/08
Mark
30
限界集落に関する新たな見方を示しているように思えます。過疎地域の問題の本質を単なる少子高齢化と見るのではなく、世代間の継承の問題として捉えているところはいい着眼だと思いました。家というものを一つの社会的単位とし、それらからなる集落の関連において「むら」を社会有機体として説明している。具体的な事例に基づき説明されている点は説得力がありますが、一方でこれからどうするんだという点に関してはやや物足りないかな。確かに厳しい状況ではあるけれど、主体性、内発性を引き出すにはどうすべきなのか。2015/01/27
てつ
17
過疎の問題に真正面から取り組んだ本。現実問題をフィールドワークし、問題点を分析し、その多様性を論じている。学術論文に近い。ただ問題提起に終わっているのが残念です。過疎問題の入門書としては最適。2017/04/15
きいち
14
10年ほど前、前職で九州各地の山村漁村を回ってU・Iターン者の方や役場の方にお話しを聞いていた。同じように高齢化が進んでいても、元気なところとそうでないところの二極化が進んでいた。一律に滅びゆくように語られる近年の限界集落論に感じた違和感を、見事に解き明かしてくれた。メディアでのみ知っている人が陥りがちな言葉の独り歩きやあきらめを撲滅しようという目的が達成されてるいい本と思う。拡大された家族という考え方や世代論の視点はまさに今必要なもの、限界集落に先進地としての価値を見出すポジティブさが素敵だ。2012/04/25
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