出版社内容情報
適切詳細な注を付して贈る、最大の国民文学の集成。画期的な初の文庫版全集。本巻は処女作『吾輩は猫である』を収録。
【解説: 吉田精一 】
ワガ輩ハ猫デアル。とはいいながら名前はまだない。しかし、わが輩の人間を観る眼のするどさはどうだろう!…中学の英語教師苦沙弥先生の家に集まる奇妙な明治の“文化人”たち、またその身辺におこるさまざまな小事件を、猫の眼を通して痛烈・ユーモラスに風刺して、文明社会を辛辣にえぐる不朽の快作を全1冊でおくる。若い読者の理解を助けるため読みやすい活字で詳細な語注を付した。
内容説明
ワガ輩ハ猫デアル。とはいいながら名前はまだない。しかし、わが輩の人間を観る眼のするどさはどうだろう!…中学の英語教師苦沙弥先生の家に集まる奇妙な明治の“文化人”たち、またその身辺におこるさまざまな小事件を、猫の眼を通して痛烈・ユーモラスに風刺して、文明社会を辛辣にえぐる不朽の快作を全1冊でおくる。若い読者の理解を助けるため読みやすい活字で詳細な語注を付した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
70
『吾輩は猫である』です。面白かったです。苦沙弥先生の家に集まる文化人のやり取りを猫の目を通してユーモラスに描かれていました、どこまでも皮肉たっぷりで痛烈な風刺は、文明を辛辣にえぐり出しているように思います。人間社会に対する皮肉と言ってもいいでしょうね。2020/05/17
mm
24
夏目漱石の本はランダムにいくつか読んだが、年代順に全部さらっておこうと思い、この全集を一から読むことに。一は「吾輩は猫である」。中国・韓国・ギリシャ・英国等々の故事、小説、学説、なんやらかんやらと日本のあれやこれやが話の中で共存していて、現代よりよほど多元的で豊かな文化じゃないか。ホトトギスに書き始めた時は単発の予定だったらしいが、好評で続けていってこんなに長くなったらしい。この頃漱石では東大と一高の先生になるも評判は悪く、妻の父は破産して…とちっとも楽しくなかったとか。創作が憂さ晴らしになったかな。2022/04/02
抹茶モナカ
20
『吾輩は猫である』収録。この作品は、滑稽で、落語的なところが魅力。それでも、禅だとか、西洋哲学だとかの知識がちりばめられていて、読むのは大変なところもある。タイトルと冒頭だけは知っていたけれど、決心して読んでみた。毎日、コツコツ読んで、時間はかかったけど、読んで良かった。2015/07/26
Kaorie
16
再読。初めて読んだときは3ページ読めず、2度目は「うん、まぁ最初の印象より面白い」くらいだったが、夏目先生周辺を何周かして読むと色々な発見がある。寺田寅彦ファンとしては寒月くんがヴァイオリンを買いに行って山を登って練習に行くシーンなど、きっと寺田さんご本人から聞いたんだろうなというネタも多くて楽しめる。この作品を読むと、夏目漱石の作品は誰かに押し付けられて読むものではなく、読むタイミングが作品に与える影響が大いにあるのだなと思う。2014/05/24
tokko
14
2017年は漱石生誕150年らしく、2017年を勝手に自分で「漱石イヤー」と呼ぶことに。まずは手始めに全集を読もうということで第一弾が「猫」。言わずもがなだとは思うけれど淡々としていて面白い。猫の観察による平板な幾つかのエピソードが並ぶのだけれど、起伏や強弱があってちゃんと読ませる。苦沙味先生からしのばれる漱石の一面が楽しいですね。2017/01/15