内容説明
「ハゲワシと少女」でピュリッツァー賞受賞直後に自殺したカメラマン。ルワンダ大虐殺を生き延びた老人。アパルトヘイトの終わりを象徴する南アフリカの暴動で犠牲になった白人。アンゴラ紛争の資金源となったダイヤモンド取引の闇商人―。著者はアフリカ特派員として取材をつづけるうちに先入観をくずされ、大陸の隅々で生きる賢者たちに魅せられていく。開高健ノンフィクション賞受賞作品。
目次
第1部 奇妙な国へようこそ(あるカメラマンの死;どうして僕たち歩いてるの;嘘と謝罪と、たったひとりの物語;何かを所有するリスク)
第2部 語られない言葉(絵はがきにされた少年;老鉱夫の勲章;混血とダイヤモンド;語らない人、語られない歴史)
第3部 砂のよう、風のように(ゲバラが植えつけた種;「お前は自分のことしか考えていない」;ガブリエル老の孤独)
著者等紹介
藤原章生[フジワラアキオ]
1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。北海道大工学部卒後、エンジニアを経て89年より毎日新聞記者として長野、南アフリカ、メキシコ、イタリア、福島、東京に駐在。地誌、戦場、人物ルポルタージュ、世相、時代論を得意とする。『絵はがきにされた少年』で2005年、開高健ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
87
滅多にないことなのだが「あとがきにかえて」を先に読んだ。正解だった。のちに開高健ノンフィクション賞をとるこの本を書いた理由を知ってからの読書となった。アフリカを日本に伝えるジャーナリストとして、9・11発生時の朝日新聞の「テロの原因は貧困にある」との机上論の記事に怒りが湧いたという。遠く離れた場所で真実を見ようともせず思い込みを正論にすげ替える。題名の少年も、勝手に撮られた写真が絵はがきになっていたことを憤っていたわけではなかった。過去の自分を見つけ只々嬉しかったのだという。真実を知ることは難しい。2022/02/19
taku
14
最初に「ハゲワシと少女」でピューリッツァー賞を取った、ケビン・カーターを追う。1995~2001年におけるアフリカの今。過去の出来事ではなく、固定されがちな一面を崩し本質的な問題を見せる。この地を語るなら避けられない、植民地、差別、紛争、貧困、犯罪。自分目線だけの慈悲は、仏教の少慈悲ということだね。盲目で差別的で非継続。あのでかい大陸にはいくつもの顔があり、そこで人々は生きてきた。切り取った報道や情報では解らない姿を知って欲しい、その思いが伝わるルポルタージュ。2021/10/26
Takashi Takeuchi
11
アフリカ南部に特派員として駐在していた作者が見たアフリカ。11本の記事。特に2本目の人車差別について自分の息子にどのように教えるか悩む話が良かった。考えがあちこち定まらずノンフィクション記事としては良くないものかも知れないが、明快な答えのない事、しかし大事な問題を正しく伝えたいという父親の悩みがリアルに伝わってきた。2021/12/13
シュークリーム・ヤンキー
5
植民地支配、搾取、貧困、内戦、差別。それらは、アフリカを理解するフレームワークとしては間違っていなくとも、社会の実態を指し示すには抽象的で大きすぎる。本作は、南ア特派員だった筆者が、アフリカ生活で印象に残った11のストーリーを紡いだもの。そのどれもから、社会のすべてを「強者vs弱者」という安直な二分法に還元することへの反発を感じる。遠い先進国から「かわいそう」と思われる境遇にある人々の確かな矜持。ニャウオ氏やガブリエル老の生き様が格好いい。そして、筆者のような姿勢と視座で人々を見つめられる人間になりたい。2021/01/17
Hamayan
4
自分が知るアフリカは、いかに表面だけを切り取って理解している情報なのかを痛感させられた。現実を目の当たりにした作者ならではの人間の生き方に触れた内容に考えさせられた。遠いアフリカには行けないが、本で学べる有り難さ。2021/09/05