内容説明
不安とは、「未知、制御不能なものをコントロールしようとする時に起こる心の動き」である。元来コントロール不可能とされるもので、古代ギリシアでも楽観的に向き合う姿勢は捨てるべきとされた。では、不安を克服する術はないのだろうか?本書は、パンデミックや災害などによる不安が社会全体を覆う今、アドラー心理学の第一人者で孤高の哲学者である著者が、不安の正体を問い直したもの。社会の不安のみならず、対人関係や仕事、病、死への不安を取り上げ、その原因と脱却への道を模索する。キルケゴールやアドラー、三木清などの思想を援用し、不安に囚われず前を向く力を提示する。
目次
第1章 不安の正体
第2章 パンデミックと不安
第3章 対人関係の不安
第4章 仕事の不安
第5章 病気の不安
第6章 老いの不安
第7章 死の不安
第8章 どうすれば不安から脱却できるか
著者等紹介
岸見一郎[キシミイチロウ]
1956年、京都生まれ。哲学者。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
M.O.
24
岸見先生なのでアドラー中心に書かれているが、この本を読んだからと言って不安感がスッキリ解消される訳ではない。しかし不安の正体や対人関係、仕事、老い、病気、死から来る不安を分析、過去の人々がどう考えたか紹介されている。まず不安の目的は人生の課題から逃れるために作り出される感情だと最初にアドラーの言葉を解説されており「ん、そうか?」と考えてしまった。と言いつつ不安感が無いのは人生の現実が見えていない事であるとも言っている。不安を取り除くのは人との連帯感であり先々を考えず今を生きる事に注力せよ、と言っている。2022/09/15
すうさん
6
この本もアドラー心理学だけでなく三木清の哲学も加味されて西洋的な感覚だけでなく東洋的日本的な哲学も加味されている所が良い。不安とは不測で不確実であるから感じる。過去は確定しているから未来のことばかり。他人や自分では変えられないものに執着しても不安が増すだけ。結局現在を生きることに夢中になれば多分不安は生じない。私も残り時間を意識すると焦りだす。逆に時間があれば余計なことばかりを考える。人生を旅だとしても終着駅に着くことが目的でない。終着駅は死だから。時にも回り道しても旅の途中の現在を楽しまないといけない。2021/06/10
suu
5
不安は「無」から生じるとのこと。ようはヒマで何も考えることがないから、不安をわざわざ考えるということ。たしかに忙しければ考えないようなことを、わざわざ考えてしまっていることはあると思う。もちろん、根拠のない楽観はよくないけれど、根拠のない悲観もそれと同等かそれ以上によろしくないというところかなと。人生を直線でみるよりも、いま現在がすべてとして生きるのはその通りだと思う。大体、何歳だから折り返し地点とか考えるのは自分がいつまで生きるかなんてわからないのだからナンセンス。つまりは今日を精一杯生きればよいのだ。2021/07/25
タペンス
4
「人生は決められたレールの上を動くようなものではなく、自分で形成しなければならない。常識的な生き方をする必要はなく、誰かに人生を決められることも必要ではない。人生はエキセントリックなものにならないわけにはいかない。何度も人生の進路を変えていけないわけではない。自分の好きに生きていいのであり、人の期待を満たすために生きているのではない。」他人が自分の思うように動いてくれない訳だから、自分だって他人の思うように動いてあげる必要は全くないと思うようになった。難しい内容が多い本だった。2022/05/28
小夏
4
行動しなきゃいけないのは痛いほど分かっているのに,漠然とした不安感に押しつぶされて,いちいち立ち止まってしまったり後退してしまったり,不安症なので何気なく手に取った。 「不安には目的がある」不安の目的は人生の課題から逃れること,という章が1番哲発された。痛いところを突かれた気がするというか。そのことに気づかせてもらえただけでも出会えてよかった本だし,他にも,人生を旅と捉えて過程を楽しむことや,不安は他者との連帯によって取り除かれることなど学びが山盛りだった。繰り返し読みたい。2022/05/08