出版社内容情報
浄土思想を古代インドから日本の近代まで、その変遷を追いながら、著者独自の死者論・他者論の観点からとらえなおした意欲作。
【著者紹介】
1949年山梨県生まれ。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター教授。専門は仏教学、日本宗教史。著書に『日本宗教史』(岩波書店)、『反・仏教学:仏教VS.倫理』(筑摩書房)他多数。
内容説明
本来の浄土思想のあり方とは。私たちの知っている親鸞像や浄土教は近代に創られたものだった。最新の研究を踏まえ、忘れられていた死者の問題から浄土思想の原点に立ち返る意欲作。
目次
第1章 現代における浄土教の課題
第2章 念仏の源流
第3章 仏教の東アジア的変容
第4章 浄土教における現世と来世
第5章 本覚思想と中世仏教
第6章 新しい親鸞像をめざして
第7章 清沢満之における宗教と倫理
著者等紹介
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949(昭和24)年、山梨県甲府市生まれ。1973年東京大学文学部印度哲学科卒。1978年東京大学大学院博士課程修了。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター教授。専門は仏教学、日本思想史、比較思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ine
1
浄土思想の成り立ちから変換期さらに今日露見している課題まで網羅的に書かれた本。筆者の末木さんは平易に説明し、文章はわかりやすいですが、浄土思想への理解が追いつかず、捉えようがないというのが正直な感想です。明治の近代化の中で、旧来の親鸞の伝説などが古いものとして否定され、優等生としての親鸞像が作られた事実があることも、本来の浄土思想の考えをわかりにくくさせているのかもしれません。筆者は現在の浄土思想には一義的に合理化された理論では解明できない曖昧な両義性があると言います。 明治の人っ!浄土思想いじり過ぎっ!2020/02/27
隠居
0
刺激的な示唆が多く満足。ただ概説におわって残念。2014/02/17
MJ
0
自力と他力、生者と死者、悟りと救済、倫理と宗教といった二項対立のどちらかに収まらない両義性が浄土思想や仏教全体にある、ということを著者は繰り返し述べている。そこを矛盾だと切り捨てて終わりにするのではなく、掘り下げて考えていくことが大切。また、近代は生者の内面の信の問題として仏教が見られてきた。これは合理的・科学的であるが、仏教古来の非科学的な、死者との関わりや来世といった要素が疎かになっているという指摘も考えさせられる。2024/03/13