内容説明
三木清は、二〇世紀前半の激動の時代を生きた思想家である。昭和初年、パスカルの人間学で鮮やかに論壇に登場した三木は、昂揚する革命運動に連帯し、無産労働者の自覚過程を重視するマルクス主義論によって若い知識人に圧倒的な影響力をもつが、治安維持法により検挙投獄され、コミンテルン的公式主義者からも攻撃排除される。やがて独自の歴史哲学、人間学を展開し、ファシズムと軍国主義に抗して論壇でも活躍。更に昭和研究会を通して政治に参画し、中国への軍事侵略に抵抗しようとするが、志と異なり翼賛に加担して挫折。西田幾多郎の克服も果たせないまま、共産党員を庇護して再び逮捕され、戦後世界を見ずに獄死する。恐慌と戦争と革命の時代、ファシズムとスターリニズムの時代に背を向けずに、天皇制国家体制をフィクションと読み切り、理論と心情を、個人と社会を統一しようという終生の課題に取り組み続けた三木清の生涯と思想が、いま蘇る。
目次
1 個人と社会(孤独な田舎者;個性と歴史;日常世界の解釈;『パスカルに於ける人間の研究』)
2 革命と主体(マルクス主義と革命;『唯物史観と現代の意識』;意識と言葉;存在性の相違)
3 歴史と運命(逮捕と排除;『歴史哲学』;不安と危機の時代;新しい人間のタイプ)
4 翼賛と抵抗(『構想力の論理』;「協同主義」と「東亜新秩序」;総力戦体制へ)
5 死と生涯(「聖戦」;獄中での死;三木清、人と思想)
著者等紹介
永野基綱[ナガノモトツナ]
1936年生。東京教育大学文学部、同大学院博士課程中退。山梨県立女子短期大学教授、和歌山大学教授を歴任。和歌山大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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