内容説明
世界言語を視野に収めた「言語類型地理論」の手法で、混迷を深め袋小路に陥った“日本語系統論”に活路を見いだす、壮大かつ緻密な論考。
目次
第1章 日本語系統論の見直し―“マクロの歴史言語学”からの提言
第2章 日本語・タミル語同系説批判
第3章 日本語の系統と“ウラル・アルタイ説”
第4章 類型地理論から探る言語の遠い親族関係―太平洋沿岸言語圏と環日本海諸語
第5章 新説・日本語系統論―環日本海諸語とアメリカ大陸
第6章 環太平洋言語圏の輪郭―人称代名詞からの検証
第7章 太平洋沿岸言語圏の先史を探る
著者等紹介
松本克己[マツモトカツミ]
1929年長野県に生まれる。東京大学文学部言語学科卒、同大学院修士課程修了。金沢大学法文学部、筑波大学大学院文芸・言語学研究科、静岡県立大学大学院国際関係学研究科教授を経て、金沢大学、静岡県立大学名誉教授、元日本言語学会会長。専攻は、印欧比較言語学、言語類型論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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お茶
4
この手の本はディクソン『言語の興亡』以来。主題は書名のとおりなのだが、「言語類型地理論」からのアプローチ。日本語起源論が失敗し続けている理由として1)方法論としての「比較言語学」や「言語年代学」が適用できる年代よりはるか以前に分岐している点、また2)以前の「日本語の(ウラル・)アルタイ語族説」にとらわれていた点にあるという。2021/05/30
allomorph
3
比較言語学的手法だけでなく他にもいろいろなものがヨーロッパ中心だったのが問題だとよくわかった。日本語と朝鮮語の共通語彙の傾向、高句麗語の系統、中国語のクレオール性などなど面白い話が尽きずスンダ・サフル、アンダマン島人など人類学で学んだこととのつながりも出てきて本当に楽しい。同時に多くの言語が消えたことを改めて感じもした。人称代名詞のパラダイムを見てすぐに考察を読まずに自分で祖語形を考える練習をするといいと思った。この本が出た翌年に証明されたナ・デネ語族とイェニセイ語族の同系性についても興味が増してきた。 2015/03/12
ひろただでござる
1
なかなか理解が及ばず読み終えるのにえらい時間がかかってしまった。自国語(母国語)と異なる「言語」の特徴とか母語には無い活用法や変化の理解をどのように概念に落とし込んでいるんだろう?これだけの種類の言語から必要とする「語」を収集し必要に応じて分類した後同定していく作業を想像するだけで胃液吐きそう…。読んでいる最中、ロシア(Россия)を「(「お」ではなく)をろしや」と筆記した理由が「そう聞こえたから…」以外の納得できる理屈がわかって思わず「あ~!」と声が出た。中途離脱しなくて良かったと…。2023/03/25
そーだ
1
語学の授業で薦められたのかな。タミル語説が比較言語学のちゃんとした手続きを踏んでいないと批判されていることは、大野晋の弟子だった先生が言っていたけど、この本でそのことが書かれていて勉強になった。所々興味深いところはあったけど、やはり難しかった。2012/06/19
ヒロくん(脱脂)
1
どんな言語でも経年によって語の意味や音形がどんどん変わっていくため、伝統的な比較言語法では遡れる年代に限界がある。そこでこの本では言語のより基本的な性格である、構造的性質や分法的カテゴリーなどに重点を置き、環太平洋地域に言語のつながりを見出しています。従来のタミル語やウラル・アルタイ語に日本語のルーツを求める説への反論などもあり、かなり面白かったです。しかし4章以降の細かい分類なんかは、専門的すぎてちょっとついていけなかったため流し読み。2012/10/12