内容説明
いまはもう寂れてしまった国道沿いの一軒のドライブイン。そこで、僕は、ただ純粋に不器用に生きる青年セイジに出会う。「人間って何だ」「人生っていったい何だ」―そんなことを考えながらも気のおけない仲間たちと楽しく過ごしていたある日、目の前で奇蹟は起こった。文壇を騒然とさせた話題作。太宰治賞作家の原点とも言うべき名作。「竜二」を併せて収録した。
著者等紹介
辻内智貴[ツジウチトモキ]
1956年福岡県生まれ。シンガーとしての音楽活動を経て、2000年に「多輝子ちゃん」で第16回太宰治賞を受賞。詩人の魂を抱いて今をさすらう孤高の小説家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
132
また辻内さんに泣かされた。どうしてこんなに心を揺さぶる物語が書けるのだろうか。彼の物語の中心には人がいる。不器用で口下手でそれでも一生懸命に生きている人たちがいる。辻内さんがプロットを作るのではなく、そういった登場人物たちがひとりでに動いて、物語が出来上がっていく感じ。だから自然で温かみがあって、作り物めいた感じがしないのだ。表題作には一人の少女を救うために命を懸けた男が出てくる。セイジはキリストと同じだ。普通の人々の普通の生活の中にある奇跡を、自然な物語として描き出す辻内さんに作家としての凄みを感じた。2015/05/06
紫 綺
96
単行本にて読了。マイノリティの哀しさを感じた。自分の生きてる意味って何なんだろう?改めて疑問に思う。2014/03/07
chimako
76
この忙しい世の中で人の目を気にしながら隙間を縫って要領よく過ごしている人たち(含む自分)よりセイジや竜二はよほど信用できる。けれど、それが息子や弟であれば少し困る。「陸の魚」は息が出来ないし、放っておくとすぐに死んでしまう。かといって、何をどうすれば良いのか……。悲惨な事件で全てにシャッターをおろした少女に光を注いだのは紛れもなくセイジの他は誰も思いつかない荒業。死にゆく母に心からの微笑みをもたらしたのは竜二の詩。良い本を読みました。映画になった『セイジ』を伊勢谷監督はどう描いたのだろう。2015/02/09
❁かな❁
76
お気に入りさんに教えてもらってからすっかり辻内さんにハマっています!辻内さんの作品読むのは3冊目です。「セイジ」「竜二」の2作収録。2作の共通点はどちらも世の中ではとても繊細で優しくて生き辛そうな人物が描かれているところです。セイジのとった行動にはかなり衝撃を受けました。内容は重くて辛かったですが奇跡が起こって良かったです。それから「竜二」。私はこちらの方が泣いてしまいました(;_;)お母さんの竜二への言葉、ボートでのシーン、ラストのシーンどれも涙が出ました。セイジと竜二が幸せに暮らしていてほしいです。2013/09/15
コットン
70
読メ友達、トモキストのホワイトノイズさんからの影響により読みました。2作品共、重くなりがちな『生きる意味』を静かに問いただす姿勢が魅力的です!(その後のリツ子ちゃんにほっとした~。)2013/08/31