出版社内容情報
創造性とは何か?脳の潜在記憶の視点から、特に音楽の創造性がどのように生まれてくるのか、脳科学・計算論科学の論文を通して探求
内容説明
芸術的感性は既知と未知の「ゆらぎ」で生じる。睡眠などによる「あたため」が発想を導く。「多種多様な環境」が海馬の成長を促す。マルチリンガルは「脳内辞書」のスイッチを切り替えられる…脳科学者が300本以上の論文を基に考察。
目次
第1章 音楽と脳科学
第2章 音楽と潜在記憶
第3章 脳はいかにしてクリエイティブな芸術を生み出すか?
第4章 発想力を身につける生活習慣
第5章 脳の成長に適した教育法
第6章 外国語はどのように学ぶのがよいか
第7章 潜在記憶研究の進展へ向けて
著者等紹介
大黒達也[ダイコクタツヤ]
青森県八戸市出身。医学博士。オックスフォード大学研究員、マックスプランク研究所(ドイツ)などを経て、現在はケンブリッジ大学にて勤務。専門は音楽の神経科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シノケン
19
芸術や創造というテーマを脳科学の視点から説明されていた。 中でも準備期→温め期→ひらめき期→検証期→創造的発想という段階はしっくり来た。しっかり考え煮詰まったときに一旦離れるとその後ひらめくということは多々経験した記憶がある。 統計的記憶の塊をチャンクという形に変えチャンクがまた繋がって記憶が広がったり、知識が繋がったりと概念がわかりやすかった。 内的動機(ワクワクする体験)も脳には○ また、脳の発達と共にどういった学習が適しているかの話もためになった。老いに負けないよう新しい環境も楽しもうと思った。 2021/05/17
Yuichiro Komiya
14
「このように情報の確かさと不確かさの振動が音楽などの芸術的感性に寄与すると考えられています」(逆U字モデルのページ)-これが本当なら、どんなすばらしい芸術作品でも、見る人によってはつまらないものに見えるんだろうな。自分の生活を犠牲にしてでもベートーヴェンやゴッホのように普通の生活に支障をきたしても、心の中から湧き上がる喜び、内発的意欲を源泉に作品を作るものこそ素晴らしい作品になる可能性があると言えるのか?2020/04/22
大先生
11
脳の潜在記憶の観点から特に音楽の創造性がどのように生まれるか?についてかかれた本です。(創造的になるための方法の本ではありません)。膨大な研究成果を整理して紹介してくれていますが、読みものとしては正直面白くない(苦笑)著者は、規則性を見つける「収束的な芸術(知能)」と規則性から脱しようとする「拡散的な芸術(創造性)」のゆらぎ゛を「芸術性」と捉え、芸術的創造は高次のより深い潜在記憶から生まれると主張しています。結局、どうすれば創造的になれるのかについては、①暇な時間を持ち、②よく寝ろということでした。2022/08/05
武井 康則
11
音楽にも造詣の深い医学博士が、脳科学の立場から創造のメカニズムを最新の科学で説明する。正直あまり期待していなかったが、面白い。第1章で脳について解剖学的に。第2章で記憶について。このあたりで創造性と絡んでくる。第3章で、脳と記憶と創造性の関係が説明される。創造はどんなメカニズムで行われるか、その時の脳の状態はなど、知ったからと言って大きな創造ができるわけもないだろうが、小さな創造、思いつき、ひらめき、違う角度から見るなどのヒントにはなりそう。2020/04/02
izw
9
音楽に焦点を当て「芸術的創造」が脳のどのような活動で生じるのかについて、最新研究を参照しながらも、やさしく解説している。創造には潜在記憶が重要な働きをしている。創造的発想が生まれるプロセスのモデルとして、社会心理学者グラハム・ワラスによる「創造性が生まれる4段階」(準備期、温める期、ひらめき期、検証期)を参照し、創造的思考とは何かを明らかにする。第3章の最後に、バッハやベートーベンに創造性、ジャズ即興演奏時の創造性に対する著者自身の研究成果の紹介があり、非常に興味深い。2020/05/11