出版社内容情報
戦前戦後の思想的敗北という苦い歴史的体験は、「転向論」より始まるこの重厚かつ
広大な一巻を生んだ。そこには、戦後日本の辿った最も深刻な暗部が、また戦後の
世界像そのものの断片が、鋭く呈示される。
「転向論」「擬制の終焉」「自立の思想的拠点」「文学者の戦争責任」「模写と鏡」
ほか代表的な思想評論を集大成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kiyo
1
晩年の吉本しか知らなかったので、とてもまともな議論をしていたことに驚かされた。ちなみに昭和30年代。吉本の議論は常に大衆というものを基盤置いている。そのなかでも、<家>または<家族>の共同性をどこまで拡張しても社会の共同体とは同化しえない、という考えは興味深いところだった(おそらくこれは丸山真男批判から出発している)。左翼運動、共産党運動は直接には現在の我々とは関係はないが、それでも<感性の解放>という視点に立てば学ぶべきところは多いだろう。2012/10/05
Hisashi Tokunaga
0
「擬制の終焉」;昭和35年安保闘争旧家のお婆さんのように振る舞う日共の奇妙さ。戦後15年目に真正は未成熟なまま闘われ、擬制は終焉するこれもまた奇妙な闘いだったという事?「思想的弁護論」;批准阻止と命が引き換えに出来かったことが敗北。国会議事堂は刑法・国会法等の運用規定により、主権者に帰属しなかった。政治的敗北が引き起こしたストイシズムとも読めるが?(2013・3記)