出版社内容情報
光源氏への女三の宮の降嫁をから、揺るぎない六条院の調和が崩れ始めていく。最高傑作「若菜」を含め、「玉鬘」から「幻」まで収録。
角田 光代[カクタ ミツヨ]
翻訳
内容説明
栄華を極める光源氏への女三の宮の降嫁をきっかけに、揺るぎない六条院の調和が崩れ始めていく。最高傑作とされる「若菜 上・下」を含め、22帖「玉鬘」から41帖「幻」まで収録。
目次
玉鬘―いとしい人の遺した姫君
初音―幼い姫君から、母に送る新年の声
胡蝶―玉鬘の姫君に心惹かれる男たち
蛍―蛍の光が見せた横顔
常夏―あらわれたのは、とんでもない姫君
篝火―世に例のない父と娘
野分―息子夕霧、野分の日に父を知る
行幸―内大臣、撫子の真実を知る
藤袴―玉鬘の姫君、悩ましき行く末
真木柱―思いも寄らない結末〔ほか〕
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
172
池澤夏樹=個人編集 日本文学全集全30巻完読チャレンジ 、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases 遂に29巻目まで来ました。華麗なる平安絵巻、優美な文章、典雅な大和言葉、恋する詠歌、中巻も堪能しました。角田 光代が小説を断筆して訳しているだけあります。続いて直ぐに下巻を読みたいのですが、2019年11月迄刊行されません。河出書房新社は刊行時期を見直すように。2018/11/20
こーた
162
玉鬘から若菜の絶頂をへて、柏木と夕霧から、幻へ。僕の年齢が光君と重なるせいか、この中冊はずっと愉しく読むことができた。光君にとっての孫が、僕にとっての子、と云う違いはあるのだけれど。僕と妻とは、光君と紫の上と年齢差がいっしょで、寿命も一般的には男のほうが短くもあり、将来は僕のほうが先に逝くに決まっている、と信じて疑わないが、もし万が一、何かの運命で妻が先に、なんてことになったらほんとうに恐ろしくて耐えられそうもない。だから、光君の悲哀は痛いほどよくわかるのだ。さて光君亡き後の世、いよいよ宇治十帖の下冊へ!2024/03/10
さてさて
158
生きとし生けるものものの定めでもある人の世の儚さは、千年を経た今の世と何も変わらないことを教えてくれる物語。長編小説の名手でもある角田さんが『読みやすさをまず優先』してまとめられた筆致の元、今の世を生きる私達の心が、平安の世を生きた人達の心と何も変わっていないことに気付かされる物語。千年も後の世の人の心を動かす物語を書いた紫式部さんの凄さに改めて驚くとともに、そんな物語を私達の元に分かりやすく届けてくれた角田さんには、改めてお礼を申し上げたいと思います。上巻に引き続き、素晴らしい物語がここにはありました。2022/08/20
ちゃちゃ
117
本文のない「雲隠」の帖。最愛の妻・紫の上を亡くした哀しみが癒えないまま、光君は静かに彼岸へと旅立った。更衣腹の皇子として誕生し、准太上天皇の地位に昇りつめ栄華を極めた光君。その生涯に寄り添うように読み進めた。特に光君の晩年、女三の宮の降嫁により、周囲に悟られないように苦悶懊悩する紫の上の姿が胸を打った。聖母のように慈愛に満ちた妻でありながらも、出家を認められず、儚い浮き草のような満たされぬ孤独を抱いたまま旅立つ様に思わず落涙。『源氏物語』が「もののあはれ」の文学と称される所以を堪能し、感無量の読後感。2022/05/13
アキ
93
上巻で数多くの女性と逢瀬を重ねた光源氏は、多くの妻を娶り、政治的にも天皇に次ぐ地位を得て、実は我が子である冷泉帝も永きに渡り皇位を務めた。財力も名誉も名声も手に入れた成功者であるが、老年になり、女三の宮は柏木に寝取られ薫を産む。葵の上と同様、紫の上も六条御息所に取り憑かれ、出家したいと望むも光君の反対で無念のまま亡くなる。数多くの登場人物が、糾える縄の如く前世の宿痾の様に過ちを繰り返す。平安時代の王朝を舞台とした人間の物語は、現代と倫理も論理も異なるが、光源氏や夕霧、柏木の心情、夫婦関係共に現代に通じる。2024/01/06