内容説明
和泉式部は受領大江雅致の娘。御堂関白道長の時代に多感な恋で浮き名を流し、その恋に揺れる情熱を和歌表現に託して果敢にうたいあげた。
目次
黒髪の乱れも知らず
春霞立つや遅きと
岩つつじ折り持てぞ見る
ながめには袖さへ濡れぬ
ありとても頼むべきかは
晴れずのみものぞ悲しき
寝る人を起こすともなき
見渡せば真木の炭焼く
いたづらに身をぞ捨てつる
つれづれと空ぞ見らるる〔ほか〕
著者等紹介
高木和子[タカギカズコ]
1964年兵庫県生。東京大学大学院修了、博士(文学)。現在、関西学院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
347
同時代の紫式部は和泉式部の歌をお気に召さなかったようだが、艶なる歌が巻頭から並んでいる。「黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき」ー和泉式部ならではの歌である。たしかに王朝歌としては恋の感情の発露が大胆であり過ぎるかも知れないが、それは想いの深さでもあるだろう。『和泉式部日記』が如実にそのことを物語る。日記とはいうものの、語り方はフィクションのそれであり、情趣もひときわに深い。思えば和泉式部は恋に自らを投入していったのではあるまいか。すなわち、和泉式部という共同幻想を造り上げたのである。2022/05/26
新地学@児童書病発動中
95
どうしてこのような歌が詠めるのだろうか。ただただ圧倒される。情熱そのものを言葉にしたような和泉式部の歌は、永遠に新しい。1000年以上の時を超えて、読み手の胸の一番深いところに飛び込んでくる。調べが整っていて読みやすいので、読んでいると心地良い日本語のリズムを感じる。技巧をあまり使わないので、一読してすぐに意味が分かることが多い。この分かりやすさ、読みやすさも彼女の歌の人気の理由だろう。自分の感情を率直に真っ直ぐに表現する姿勢がたまらなく好きだ。時代も国も違うが、私の好きな米の詩人ホイットマンに似ている。2017/10/21
kaizen@名古屋de朝活読書会
59
#和泉式部 #和歌 黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき #返歌 黒髪が肩まで伸びで枝毛なりパーマかけた後やっぱりおかっぱ #短歌 小倉百人一首では、56.和泉式部あらざらむ この世のほかの 思ひ出にいまひとたびの 逢ふこともがな。今昔秀歌百選では、35,もの思へば澤のほたるもわが身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る(後拾遺歌集巻二十)選者:高池勝彦(辯護士)2016/01/17
夜間飛行
55
師宮との間に交わされた贈答歌はどれも魅力的だ。《世の常のことともさらに思ほえずはじめてものを思ふ朝は》や《偲ぶらんものとも知らで己がただ身を知る雨と思ひけるかな》など、後朝や長雨によそえる男の気持に寄り添い、二人の愛の世界をさらに増幅させる言葉をとっさに紡ぎ出す懐の広さ。《世の中に恋といふ色はなけれども深く身にしむものにぞありける》…何という事もない歌のようでいて、身、つまり身体の感覚になぜか惹きつけられる。《瑠璃の地と人も見つべし我が床は涙の玉と敷きに敷ければ》など、孤独を見つめた歌も異彩を放っている。2014/10/04
ピロ麻呂
32
(マイベスト)黒髪の 乱れも知らず うち臥せば まづかきやりし 人ぞ恋しき 髪の乱れも気にせず臥せっていると、かつて私の髪を掻き撫でてくれた貴方が恋しくてたまらない。2017/01/24
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