目次
ちはやぶる神代も聞かず…
抜き乱る人こそあるらし…
大原や小塩の山も…
人知れぬ我が通ひ路の…
月やあらぬ春や昔の…
唐衣着つつなれにし…
名にしおはばいざ言問はむ…
行き帰り空にのみして…
紫の色濃き時は…
見ずもあらず見もせぬ人の…〔ほか〕
著者等紹介
中野方子[ナカノマサコ]
1951年東京生。お茶の水女子大学大学院・立正大学大学院修了。現在、お茶の水女子大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
364
数ある業平の歌から35首を精選。勅撰集でいえば、業平はやはり古今歌人であろう。古今への入集が30首。そのうち戀の歌が11首。業平の歌は『伊勢物語』との幸福な輻輳から、戀の歌において一層その情調の拡がりを開示する。「月やあらぬ…」の歌がまさにそれを代表するだろうか。もっとも、二条后高子との道ならぬ戀は最近ではフィクションと見られているようなのだが。現実と物語的幻想もまた業平の歌ならでは。例えば「狩り暮らしたなばたつめに…」の歌。そして業平の辞世の歌とされる「つひに行く道とはかねて…」の歌に涙するのである。2022/05/23
kaizen@名古屋de朝活読書会
60
#在原業平 抜き乱る人こそあるらし白玉の間なくも散るか袖のせばきに #和歌 #返歌 #布引の滝 に歌碑あり三十六新神戸駅徒歩一時間余 #中野方子2016/01/24
かふ
20
図書館本。在原業平は『伊勢物語』のイメージで「白玉か 何ぞと人の 問ひしとき 露と答へて 消えなましものを」が好きだったのだが、ここには納められていない。そこにこの業平の和歌として『伊勢物語』から独立して業平の人となりの和歌を読もうとする入門書であることが伺える。そこにいるのは恋の達人よりも自由人である業平の姿でありアナーキスト業平としての個人の歌であった。例えばその代表作「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身一つはもとの身にして」は恋の歌というより人生訓であった。2023/06/12
はるわか
13
ちはやぶる神代も聞かず竜田川唐紅に水くくるとは/人知れぬ我が通ひ路の関守は宵宵ごとにうちも寝ななむ/月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身一つはもとの身にして/唐衣着つつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ/名にしおはばいざ言問はむ都鳥我が思ふ人はありやなしやと/かきくらす心の闇に惑ひにき夢現とは世人さだめよ/世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし/忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏みわけて君を見むとは2022/03/30
ハルト
8
読了:◎ 「伊勢物語」のモデルであり、皇統であり、多感さと端麗な容姿を持つ業平が、その自由奔放さから作った歌たち。「心余りて言葉足らず」と云われた通りに、歌に秘められた真情が歌からこぼれ落ち、心と心のせめぎ合いとして表される。読んでいてすんなりと心に嵌まるわけではないのだけれど、意味が見え、くり返し読んでいると、その情緒の豊かさに引き込まれる。2022/02/05