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内容説明
悪魔の所業か、稀代の救世主か?医学史上空前の論争を巻き起こした、「精神外科」の実相とその時代。医療ジャーナリスト協会最優秀作品賞受賞。
目次
一九三六年九月
リッテンハウス・スクウェア
学生時代
精神病院の病棟で
完璧なパートナー
ロボトミーの推進
戦線
前進と退却
滝
名声
ロードウォリアー
故郷を離れて
落日
亡霊
著者等紹介
エル=ハイ,ジャック[エルハイ,ジャック][El‐Hai,Jack]
ロスアンゼルス生まれ。カールトン大学ミネソタ校卒業。20年以上にわたり、歴史的ジャーナリズムを専門とするライターとして活躍、医学ジャーナリズムに対して与えられるジューン・ロス記念賞などを受賞している。米国ジャーナリスト作家協会の会長を務めたこともある
岩坂彰[イワサカアキラ]
1958年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。編集者を経て翻訳者に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
70
ロボトミー手術を米で普及させた男の生涯を描くノンフィクション。精神医療の歴史も垣間見える。経眼窩ロボトミー手術(アイスピックを眼の穴から刺し脳の一部を削除する……)を確立させたとある。当然当時から倫理的に強い批判もあったが、有効な治療手段のない精神病患者には唯一の望みだった。50年代、向精神薬の発達からロボトミーは廃れていき、後には禁止されるようになった。波乱に満ちた人生を送る彼は実に誠実な医者で、手術後の患者全員の追跡調査を数十年続けていたのだという。厚い本だが一気に読めた。入手難だが良書。2016/11/14
こばまり
53
独善的で功名心の強い医師の存在が時代のニーズと結び付いた時、事態は加速する。時折映画に登場するアイスピックを手にしたマッドサイエンティストはメタファーなどではなく実際で、但し医師は狂気ではなく勤勉であった。精神医療の医学史知識が広がる良書。2017/02/20
mawaji
7
功名心もあったかもしれませんが医師としての良心や患者に対するsympathyも持ち合わせていたのにこのような所業に至ってしまった医学界の負の歴史、読み応えがありました。新しい治療法を無計画に実施し、結果の評価もエピソード的なものしか挙げない科学の対極に位置するような医師は今の時代も出てきかねないというか出てきているかも。がん放置療法を唱えている医師とか。週刊誌で得られる生半可な情報を読んだ患者や家族が誤った希望や印象を抱いて患者が殺到したという記述も今のWELQやガッテンに通じる問題のようです。長かった。2017/03/17
ぴーまん
3
やるせない気持ちになり、一気に読んでしまった。 脳は恐ろしい。人知を超えた脳の複雑性に、あまりにも単純な理論と手技で挑みかかるフリーマンの姿勢は蛮勇としか言いようのないものだけど、ここまで詳細な伝記を読んでしまうと、「悪魔の医師」といったレッテルで切り捨てられない人間的な共感がどうしても生じてくる。 ロボトミーの背景には、有効な治療法がない中で、戦後激増した患者を病院に押し込めることで対応せざるを得なかった社会情勢がある。 フリーマンのやり方は滅茶苦茶だけど、以後の彼の冷遇(というか無視)を読んでると→2019/01/31
玄米 麦代
3
ロボトミー手術を受けた人が書いた“僕の脳を返して”を読んだ時はマッドドクターかと思いましたが、本書を読んで患者のことを真剣に考えていた医師だということが分かりました。 術後は調子が良くなり仕事も順調な患者さんもいるようです。 つまり、手術によって救われた人もいるわけです。 手術自体が悪いのではなく技術不足なのが良くなかったのかな?精度を上げれば悪い治療法ではないのかも?と思いました。 でも、健康な目にメスを入れるレーシックと同様に自分は絶対に受けたくないですね。(^^;) 2014/05/03