内容説明
「T邸」は、東京・港区のほぼ中心に建つ。築八十年。数百坪の敷地にはうっそうと木々が繁り、都市の騒音と陽光をさえぎっている。総床面積二百有余坪の広大な和洋折衷の館は、今、ひっそりと都心の闇の中に沈んでいる。篠山紀信は「T邸」を舞台に断続的に幾人かの人物を撮影した。日時、被写体、撮影の意図はそれぞれに異なっている。にもかかわらず、それらの写真から何か共通する空気、非現実を思わせる匂いが発せられるとすれば、それは「T邸」という磁場の力、そしてそれを感知した篠山紀信の眼力の相乗効果によるものだろう。