闇の脳科学―「完全な人間」をつくる

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闇の脳科学―「完全な人間」をつくる

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  • サイズ 46判/ページ数 326p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163912752
  • NDC分類 493.72
  • Cコード C0098

出版社内容情報

「脳に電気ショックを与えて、『完璧な人間』へとつくり変える」

現在の米脳科学界における一大トレンドであり、DARPA(米国防高等研究計画局)も莫大な予算のもと参戦する「脳深部刺激療法」。「サイコパス」「依存症」「うつ病」「てんかん」「パーキンソン病」、そして「小児性愛」「性犯罪者」さえも矯正可能であるという夢のような治療法だ。軍事転用すれば、冷酷な兵士を人工的に生み出せる。

しかし、闇に葬り去ったはずの禁断の治療法がふたたび甦ってしまった、と戦慄する人も多い。というのも1950~60年代、マッドサイエンティスト疑惑のある天才脳神経外科医が、倫理観の希薄な南部(ニューオリンズ)の大学で、思う存分に人体実験を敢行していたからだ。患者の頭蓋骨に穴を空け、電極を差し込むことによって。しかも彼は、人類の進歩に貢献する英雄として、もてはやされていたのだという。

恐るべきことに彼は、同性愛者を異性愛者へつくり変えることに成功。暴力行為が一瞬で消えた患者、上限のない幸福感に満たされる患者、メンタル疾患が消えた患者なども。過激化する人体実験。その一方で、手術失敗で発生した廃人たちを隠し切れなくなりーー。人間の本質=「脳」という臓器に変更を加えることは許されるのか?

内容説明

人間の精神は操れる。人類のタブーに挑戦して葬り去られた天才科学者の記録とDARPA(国防高等研究計画局)も参戦する米医学界の最前線。

目次

プロローグ 脳を刺激し、同性愛者を異性愛者へ作り変える
第1章 ゴー・サウス―野心に燃える若き医師
第2章 忘れ去られた“精神医学界の英雄”
第3章 一躍、時代の寵児へ―“ヒース王国”の完成
第4章 幸福感に上限を設けるべきか
第5章 「狂っているのは患者じゃない。医者のほうだ」
第6章 その実験は倫理的か
第7章 暴力は治療できる
第8章 DARPAも参戦、脳深部刺激法の最前線
第9章 研究室にペテン師がいる!
第10章 毀誉褒貶の果てに
エピローグ 七十六歳の老ヒース、かく語りき

著者等紹介

フランク,ローン[フランク,ローン] [FranK,Lone]
デンマークを代表するサイエンス・ジャーナリスト。神経生物学の博士号を持つ。米国のバイオテクノロジー業界でキャリアを積んだ後、『My Beautiful Genome』『Mindfield』(ともに未邦訳)を執筆し、高い評価を得る。「サイエンス」や「ネイチャー」などの学術雑誌やヨーロッパの有力紙に寄稿するかたわら、コメンテーターや制作者としてデンマークのテレビ、ラジオでも活躍。科学、テクノロジー、社会にまつわる議論をリードする存在である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

85
1950年代同性愛者は精神疾患とみなされていた。精神科医で神経科医のロバート・ヒースは当時最先端の医療の脳深部刺激の研究をニューオーリンズで始めた。統合失調症や精神病は格好の臨床材料となった。マスコミはこぞって賛辞を送り一躍時の人となった。しかし現在標準治療となり隆盛を誇る脳深部刺激の世界で彼の名を知るものはわずかしかいない。メディアで取り上げられた最先端医療がいかに簡単に忘却の彼方に消えていくことか。著者は忘れ去られた業績の歴史がなぜ起こったのか丹念にその足跡を辿る。それは時代精神の変化とでも呼べるもの2020/12/16

アナーキー靴下

71
アングラ本のようなタイトルと表紙だが、内容は「脳深部刺激療法」という実験的治療で精神疾患にアプローチした、ロバート・ヒースという忘れ去られた科学者の足跡を追った本。脳科学寄りではなく、埋もれた科学者の再評価と、この分野の倫理的難しさを問うもの。著者はヒース批判者に対して、倫理規程が厳格化された現在のフィルターを通して見ているのでは、と言うが、どちらかといえば著者の方が、現代の脳科学に照らし合わせてヒースの研究を見ているように思う。倫理的には手段以上にどこまでが治療すべき疾患か、の線引きが重要と感じた。2021/03/15

小鈴

27
重症の鬱病患者に脳にペースメーカーを埋め込み電源を入れるとが春が来たように感じる。そのスイッチは自分で押せるとしたらあなたは押しますか?。脳深部に電極を刺す実験を繰り返したマッドサイエンティストとして読み始めたのだがそうではなかった。忘れさられた精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒースの実験結果が現代に突きつけた意義は大きい。現在の最先端の統合失調症や鬱病治療は脳深部刺激法(DBS)へシフトしつつある。これはヒースが既に1950年代に行ったことなのだ。電源オンすると変わる自我とはいったい何なのだろうか。2020/10/26

re;

21
知りたい。もっと。知らない。その領域を<知っている>でコンプリートしたい。欲望は人間の進化の歴史。硬い骨に覆われた柔らかな中身。ここを刺激したら、一体どこにどんな反応があるの?ダイレクトにアクセスすることが許された時代、行われていたのは純粋に知的好奇心を埋めることともいえるけど、彼が脳医学の発展を信じていたことは間違いない。葬られた存在。繰り返される歴史。愚かな私たち。その愚かさの真実を教えてよ。ねえ、脳みそは知っているの?なぜ私たちが、こんなにもすべて知りたくて止まないのかを。2022/03/26

くさてる

17
おどろおどろしい題名だけど、実際の内容は、精神疾患への治療法のひとつである、脳深部刺激療法の創始者である化学者の姿を追ったノンフィクション。1950年代には天才ともてはやされていた彼の名前はなぜ科学史から消えたのか、脳の特定箇所に電流を流すことによって、人格を変えることが可能ならば、それは倫理的に許される行為なのか。そんなことを考えずにはいられない、フィクションを越えるノンフィクションの物語です。2020/12/02

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