出版社内容情報
ロシア帝国の解体ののち,イスラムとナショナリズムを総合するムスリム民族共産主義の前に立ちふさがった壁は何だったのか.タタールとロシアの民族関係を中心に,ソ連解体と現代の民族紛争をも透視して,ナショナリズムの深淵を描く.
内容説明
イスラム、ナショナリズム、社会主義の複雑な連関を解く。国内植民地イスラム世界と陸でつながるロシア。革命は何を変えたのか。ロシア帝国及びソ連の解体を透視して、現代イスラムと民族問題を理解する手掛かりを探る。
目次
プロローグ 暗号書簡
1 記憶の負債(スターリンの罠;民族の連鎖;私は何者か;領土的自治と文化的自治;民族問題部会;ソ連解体とタタール民族運動)
2 アンチポード(ルビヤンカ内部監獄;イスラム・ネットワークの解体;「ムスリムのトロツキー」か?;スルタンガリエフ最後の闘争)
エピローグ 社会主義・国家・党
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
3
ロシア革命からスターリン時代にかけて頭角を現し、粛清されたムスリムコミュニスト、スルタンガリエフの生涯を追った「スルタンガリエフの夢」の続編的内容の本。イスラムと社会主義の融合を目指したものの、スターリンによって敵との内通者として粛清されていくが、その背景や関係者の動きを追っていく。スルタンガリエフは、ロシアのムスリム達の権利確立や他民族の雑居する地域での共存など、後世の参考になる事を志向していたのだが。ソ連崩壊によって、本書の執筆が可能になったという、著者の感慨が溢れる「あとがき」も読後の余韻を増す。2015/03/03