内容説明
歴史学とはなにか。東京大学文学部での講義をもとに、歴史研究の本質にせまる著者渾身の書き下ろし。歴史学に向き合うすべての人へおくる決定版。
目次
序論 史学概論の目的
第1章 歴史学の目的
第2章 歴史学の対象とその認識
第3章 歴史学の境界
第4章 歴史認識の基本的性格
むすび ソフトな科学としての歴史学、およびその後
著者等紹介
遅塚忠躬[チズカタダミ]
1932年東京生まれ。1955年東京大学文学部西洋史学科卒業。同大学社会科学研究所助手、北海道種学助教授、東京都立大学教授を経て、東京大学文学部教授、お茶の水女子大学教授、などを歴任。文学博士。現在、東京都立大学およびお茶の水女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すがの
7
七月ごろからちまちま読んで、ようやく完読した。名著。大学に入って一年半程度であるが、数十年後に「学生時代に読んだ思い出の本」と問われる機会があれば、まず間違いなく、この本を挙げることにはなるだろう。大著で高価だが、まったく無駄ではない出費であった。2015/10/18
africo
4
前読の『歴史を哲学する』から流れで本棚に寝ていたものを引っ張り出す。まずは、著者がこの書物をものされたのは物故の直前、既に闘病中であったとのこと。むすびに「だれかが蛮勇をふるって一つのまとまった史学概論を書かなければ」とあるように、使命感の賜物であり素直に敬意を表します。中身についてはおそろしく妥当であり、むしろ直感や常識からくる妥当さを理論的に構築するために500頁費やしたのであろう。歴史学を「ソフトな学問」とし、この本にもソフトな箇所がある。著者の情熱に報いるために今後も批判的に継承していくべきだろう2022/07/25
わび
4
輪読会で使用。フランス革命の泰斗が著した歴史概論として、歴史学の領域や性質について包括的・体系的に論じられている。一読した感想だが、言語論的転回後の歴史学を巡る環境から戦後歴史学を必死に防衛しようとした書だという思いを感じる。著者は事実認識と歴史認識を切り分け、前者の持つ客観性を以て歴史学の科学性の根拠の一つとしているが、事実認識から主観性が完全に排除されることはありうるか。また、著者は折衷案として、度々「柔らかな」と形容詞を付けた実在論や客観性を提唱するが、それは物語り論への屈伏に違わないように思えた。2018/09/19
kapo54
2
数年越しの読了。優先度が低く、後回しになってしまったが非常によくまとまっている。議論の進め方が非常に丁寧で、門外漢の私でも話を追える。歴史学という学問の性質が分かる。野家氏との論争は『歴史を哲学する』を読んだところ、野家氏に分があるように思う。2018/11/21
Naoya Sugitani
1
歴史学の理論とその意義を詰め込んだ決定版。まず歴史学にどういう種類があるのかを分類し、続けてその意義と方法論を丁寧に明らかにしていく。歴史修正主義への批判や歴史学への批判を交えている。歴史学を学ぶすべての人がまず読むべき一冊。2017/07/25