内容説明
「読まされた」四書五経に対し、「隠れてでも読んだ」水滸伝。少年時代からの水滸伝ファンであった著者が、この痛快無比な長篇小説の中から宋江・魯智深・蔡京ら特色ある人物を取り出し、虚構と歴史的事実とを対比させて、水滸伝がかくも広範に読みつがれてきた魅力の源泉を探る。
目次
第1章 徽宗と李師師
第2章 二人の宋江
第3章 妖賊方臘
第4章 宦官童貫
第5章 姦臣蔡京
第6章 魯智深と林冲
第7章 戴宗と李逵
第8章 張天師と羅真人
第9章 宋江に続く人々
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
dokugokan1
2
宮崎市定『水滸伝』は、水滸伝の登場人物たちの地位や行動を切り口に、唐・北宋・南宋の社会や制度を描く。それによって、当時の人民の生活を描くことにも成功している。 水滸伝の人物をとりあげていたら、知らぬうちに史記まがいの紀伝体ができあがっていた、と著者は述べる。 この自己評価には、人物について書くことは列伝(紀伝体)を作ることなのだと思わされる。2021/02/11
ソルト佐藤
2
後書きにもあるとおり、本紀列伝形式になっているので、人物中心で、なおかつ、多角的。水滸伝だけではなく、北宋の時代もよく分かります。宋江二人説はおもしろくなるほどと思うことしきり。高島俊男は、史書が捏造されたと云うことでこの説を批判していたけれど、さすがに複数の史書は難しいような気がする。たしかに、これは疑いない史書だと信頼を置きすぎな宮崎先生ではありますが・・・。2010/08/13
Tonex
1
136頁に《宋代の兵制一般を理解した上で読むと、一層その中の話がいきいきとしてくる場合も多いに違いないと思われる。》とあるが、確かに物語の歴史的背景についての知識があるのと無いのとでは大違い。/高島俊男『水滸伝と日本人』にこの本が紹介されていて、《『水滸伝』にあらわれている官職・制度などについて解説したもので、概してその方面にうとい文学研究者にとっては非常に有用なものである。》と書かれていたので読んでみたもの。2014/12/08
brink
1
カタそうと思って読み始めたのですが、読みやすかったし、意外に面白い語り口で楽しめました。水滸伝の人物について語りつつ、北宋の通史概説にもなっている。読み終えると、ざっくりと時代背景と流れが頭に入っているので、水滸伝本編を読む前の良い予習になりました。2011/01/05
pepe
0
水滸伝の時代的背景、登場人物の原型などを考証する。歴史家ならではの視点。2017/03/26