出版社内容情報
小谷 賢[コタニケン]
著・文・その他
内容説明
国家の政策決定のために、情報分析や防諜活動を行うインテリジェンス。公安や外交、防衛を担う「国家の知性」である。戦後日本では、軍情報部の復活構想が潰えたのち、冷戦期に警察と内閣調査室を軸に再興。公安調査庁や自衛隊・外務省の情報機関と、共産主義陣営に相対した。冷戦後はより強力な組織を目指し、NSC(国家安全保障会議)創設に至る。CIA事案やソ連スパイ事件など豊富な事例を交え、戦後75年の秘史を描く。
目次
序章 インテリジェンスとは何か
第1章 占領期の組織再建
第2章 中央情報機構の創設
第3章 冷戦期の攻防
第4章 冷戦後のコミュニティの再編
第5章 第二次安倍政権時代の改革
終章 今後の課題
著者等紹介
小谷賢[コタニケン]
1973年京都府生まれ。立命館大学卒業、ロンドン大学キングス・カレッジ大学院修士課程修了。京都大学大学院博士課程修了。博士(人間・環境学)。英国王立統合軍防衛安保問題研究所(RUSI)客員研究員、防衛省防衛研究所戦史研究センター主任研究官、防衛大学校兼任講師などを経て、2016年より日本大学危機管理学部教授。著書『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ、第16回山本七平賞奨励賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばたやん@かみがた
92
《結構頑張っている&不足な点》(1)国家の意思決定のための情報収集や防諜を指す「インテリジェンス」。「日本は全然なってないよ」というイメージを持つことが多いですが、実状はどうなのか。敗戦直後から現在に至るまでの歴史を説き起こして探っていきます。 (2)占領期から第2次安倍政権までの5つの時期に章を分かち、それぞれの時代における現在の内閣情報調査室(内調)はじめ、警察、公安、外交、防衛などの各セキュリティ機関の変遷をたどっていく読みやすい構成です。戦前のタテ割り状況を色濃く引き継いだ(1/5) 2023/09/28
みこ
38
時に海外からスパイ天国と揶揄されてしまっている日本の実態がいかに構成されていったか。それを改善するためにどのような動きがあったのか。情報以外にもよく言われている縦割り官庁の弊害、秘密を守るのは当然としても秘密の定義は何なのかという迷走、さらに、犯罪として裁く際に公開裁判で漏らした秘密の内容が明らかになってしまうジレンマ。様々な要因がこの国のインテリジェンスを衰退させた。だからこその特定秘密保護法案なのだが、この法案に判定している人は本書に書かれていた事実をどこまで認識していたのか。2022/09/20
Tomoichi
25
戦後新たに再建を目指したインテリジェンス機関の通史。吉田茂・町村・安倍と日本が普通の国になるために尽力した政治家をもっと評価してもいいと思う。しかしこういう機関の強化を邪魔する輩は、何かやましいことがあるんだろうね。ソ連(ロシア)の犬や中共・北朝鮮のポチ達。先日もあるコメンンテーターが平和国家日本って言ってたけど、ロシアも中共も北朝鮮もみんな平和国家って自分たちを思っているよ(笑)2024/03/10
とある本棚
23
インテリジェンスコミュニティの変遷を時系列で辿る一冊。ご多分に漏れずここでも役所間の縦割りが長らく課題となっており、その打破には2014年の国家安全保障局の設置を待たなければならなかった。日本でのスパイ事件も取り上げられているが、意外と政権の中枢にスパイが食い込んだ例もあり、日本の安全保障が不安になる。特定秘密保護法により、日本の秘密情報保持の体制が整い、米国をはじめ同盟国との機微な情報の共有も可能になったという指摘は目から鱗。特定秘密保護法は国外向けの要素が強かったことを初めて知った。2022/10/02
かごむし
22
情報は素材のままではだめで、集約し分析し利用する、という加工によって初めて役に立つらしい。日本はボトムアップの意思決定方式を採用するため、大統領のような強い権力者の元に情報が集約されることがなく、アメリカとの同盟関係があるためにその必要もなく、インテリジェンスの分野は弱かったという。第二次安倍政権下でNSC、NSSが発足し、この分野で日本が戦える土台ができたということのようだ。思ったより本書はスパイスパイしてて、スパイは金、思想信条、強要と妥協、エゴのうち、最も響く所を突くという記述とかほうううと思った。2022/10/18