内容説明
ホルクハイマー、アドルノ、ベンヤミン、フロム、マルクーゼ…。一九二三年に設立された社会研究所に結集した一群の思想家たちを「フランクフルト学派」とよぶ。彼らは反ユダヤ主義と対決し、マルクスとフロイトの思想を統合して独自の「批判理論」を構築した。その始まりからナチ台頭後のアメリカ亡命期、戦後ドイツにおける活躍を描き、第二世代ハーバーマスによる新たな展開、さらに多様な思想像の未来まで展望する。
目次
第1章 社会研究所の創設と初期ホルクハイマーの思想
第2章 「批判理論」の成立―初期のフロムとホルクハイマー
第3章 亡命のなかで紡がれた思想―ベンヤミン
第4章 『啓蒙の弁証法』の世界―ホルクハイマーとアドルノ
第5章 「アウシュヴィッツのあとで詩を書くことは野蛮である」―アドルノと戦後ドイツ
第6章 「批判理論」の新たな展開―ハーバーマス
第7章 未知のフランクフルト学派をもとめて
著者等紹介
細見和之[ホソミカズユキ]
1962年、兵庫県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。現在、大阪府立大学現代システム科学域教授。博士(人間科学、大阪大学)。ドイツ思想専攻。詩人。大阪文学学校校長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びす男
59
「アウシュヴィッツのあとで詩を書くことは野蛮である」。文明が進歩したヨーロッパで、なぜナチスが台頭し、ホロコーストが起こったのか。ガス室で同胞たちが殺されていった事実に、「思想」で闘いを挑んだ「フランクフルト学派」の思想家たちがテーマ。本自体は歴史的経緯をなぞるばかりで難しい単語も多い。おそらく、原典を読んだ方が面白いだろう。導入としてなら悪くないかも。アウシュヴィッツへは留学中に訪ねた。「ここから人類は深刻な問いを突きつけられたんだな」と思ったのを、今でも覚えている。あとで書評かきます。2015/01/14
佐島楓
36
テキストの複数個所にわたってこのフランクフルト学派のことが取り上げられていたので読んでみた。人間の本質的な野蛮性という研究において、まさに今読まれるべき文献も多いのではないかと思った。2015/06/29
壱萬弐仟縁
36
市民哲学者ホルクハイマー(16頁~)。等価交換という合理性によって全面的に浸透されているはずの市民社会は、発展すればするほど見通しがたい経済の 自然法則性(傍点)によって支配されています(119頁)。『啓蒙の弁証法』の文化産業論で、テレビ、ラジオをふくめて文化産業の現状を こっぴどく批判したアドルノだが、新メディアを活用した面もある(136頁)。2015/05/14
非日常口
20
ファシズムの内と外のギャップを描いた「ボラード病」を読んだ直後にナチズムによりアメリカに亡命した人々を取り上げる本書にザッと目を通す。タルドやルーマンも入り、ホルクハイマー、アドルノ、ハーバマスのラインを概括でき、今年自分の耳に残った人々の名前が散見され、なんとなしにまだ準備が足りないと思っていたフーコーやドゥルーズへの橋渡し、そこから現代に向けての橋が自分の中で欠けていた部分が宇野経由の資本論解釈のラインに乗った気がした。今回は全体の流れを確認した程度。再読するときはベンヤミンコレクションを読んだ後。2014/10/31
かんがく
17
多様な哲学者を新書一冊にまとめているので深い理解には至らなかったが、フランクフルト学派の大きな流れを把握することが出来た。マルクスとフロイトの統合という言葉でしか知らなかった事実の具体的内容、世代ごとの違いなどについて知れたことが収穫。ベンヤミン、ハーバーマスに特に興味を持った。2021/02/22