内容説明
『古事記』は明治神宮のようなものである。見た目は古いが、作られた時代は、実は新しい。『古事記』の神話も、古来のものをそまま採録したのではなく、新しく誕生した国家=「日本」の要請が作り出した新たな神話である。イザナキ・イザナミ神話は男尊女卑か?イナバのシロウサギは白色なのか?浦島太郎が玉手箱を開けなかったらどうなったか?古くからの神話が解体・編成されて誕生した『古事記』神話を解読する。
目次
第1章 「日本」の誕生―声と文字
第2章 ムスヒ―生命
第3章 イザナキ・イザナミ―対立する世界
第4章 アマテラスとスサノオ―新しい関係
第4章 オオクニヌシ―書きかえられた神
第6章 アメノワカヒコ・タケミナカタ―裏切りと敗北
第7章 ホノニニギ―「万世一系」の神話化
第8章 ヒコホホデミ・ウガヤフキアエズ―日向三代の物語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鯖
18
「古事記は国家神話である」というゴールから逆算して、演繹法で書かれた本。それゆえに分かりやすいけれども、断定的で説明がちょっと足りないような…。妙に読みづらかった。諏訪のタケミナカタとミシャグチについて「諏訪湖に追い詰められても、諏訪にはスサノオがおらず、退治されなかった。白亜紀の恐竜のように湖の底に今も残り続けるのだ。今もミシャグチが生き続けるのだ」との記載が。諏訪を表立って国家側が平定しなかったからという理解でいいんだろうか。なんかいまいちわかりづらい。2019/08/17
おおかみ
14
古事記は、民間説話が解体・編成されて誕生した。神々は個性を与えられ、因果関係に基づいた一続きのストーリーを描くことになったが、そのため伝承と食い違っていたり、あるいは全くの創作であったりと、多くの謎が生まれた。その謎を逐一解き明かしたのが本書である。全く知らなかったり、知ってはいたが誤解していたりしたことも少なくない。独特の語り口も印象深い、満足の一冊。2011/03/09
ロッキーのパパ
13
著者は「日本」国家を権威付けるために神話の書き換えを行ったことを主張している。本書では、古事記のテキストからそれを読み解くことに成功しているように思える。日本書紀に比べ、古事記の方は古くからの伝承から構成されていると言う考えが間違っていることが分かった。2011/05/17
白狐
9
古事記に隠されている裏のストーリーを動的視点に立って紐解く。日本書紀との関係も新たに知ることができて良かった。民間の神話を元にして態と話を変えたり、読者にみせないようにしたり、有耶無耶のままにしたりした。断片的な話を一筋の線にして進め、矛盾も生じるがそれを分からないようにした、書きかえたというのが面白かった。2018/01/08
はる
9
古事記の神話は国家神話、風土記や万葉集とは次元の違うもの。古事記の神話は意外なほどによく考え抜かれていて、隠された意図がある。日本のために書きかえられた神話である。2016/09/19