出版社内容情報
「自由・無差別・多角主義」を謳いながらもアメリカの圧倒的影響力下にあるIMFは、どのように中小・途上国援助を進めるのか。
内容説明
第二次世界大戦後の国際金融体制を支えてきたIMFは、世界銀行とともに、ラテンアメリカやアジアをはじめ途上国支援に重要な役割を担ってきた。しかし、問題の多い融資方式に加え、アメリカを中心とした先進国主体の運営のため、途上国・新興国の立場を十分反映していない。国際金融危機を経て、IMFは今後どのように役割を果たし、機能していくのか。今こそ国際金融体制の根本的改革が求められている。
目次
第1章 IMF(国際通貨基金)と国際金融体制
第2章 IMF設立とブレトンウッズ体制
第3章 IMFの変貌と拡大(一九七〇~八〇年代)
第4章 融資拡大と資本収支危機(一九九〇年代)
第5章 IMFと国際金融
第6章 最近の国際金融改革とIMF
第7章 新しい国際金融体制構築と展望
著者等紹介
大田英明[オオタヒデアキ]
1955年、広島県に生まれる。1980年、東京大学経済学部卒業。1982年、ケンブリッジ大学大学院修了(MPhil)。経済学博士(京都大学)。1984年、国連工業開発機関(UNIDO)本部職員。1990年、野村総合研究所(NRI)入社、アジア調査部、NRIシンガポール、経済調査部。2005年、愛媛大学法文学部総合政策学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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日の光と暁の藍
5
拙速な資本の自由化と金融の自由化は、国内経済の安定成長に寄与しない。海外から資金や援助を頼む前に途上国各国がしなければならないのは、まず国内の整備、国内を固めることである。つまりは、国内資本の蓄積と国内投資の活用である。ここで問題となるのが、途上国や国内資本市場の整備が遅れている国々というのは、その要因があるということである。政治腐敗や治安の乱れ。世界中には混乱が充ち溢れている。IMFに求められるのは、他の国際機関、世界銀行のみならず、諸々の国際支援団体との協力の下、包括的なプログラムの提案実施であろう。2021/05/04
Ray
4
IMFの理念と歴史。詳しく書かれている印象だが、完全に理解できたかというと・・(笑)なんか思ってたようにはいってないことは分かった。2012/06/01
Shun
3
ギリシャ危機の辺りからIMFを意識するようになり、希の場合、公務員給与額、年金受給額が突出しているなどで、一定の歳出カットは必然的だと考えるものの、緊縮政策の施行で、大混乱が発生したことにより、経済縮小させて税収の確保は厳しく、長期的なマイナスの方が大きいのではと、漠然とした疑問を抱いていたが、それを明快に示してくれた。経常収支バランスの均衡を優先し、借入国の経済悪化よりも借入国が確実に返済する方を採るという。かなり勉強になった。他書で勉強し直して、再読したい。自信を持ってお薦めできる本。2013/04/12
リョウ
2
IMFとはどのような団体か、そしてどのような問題を抱えているのか。これまでもIMFにかなり批判的な著者の影響もあるかもしれないが、あまりに官僚的で不合理なことばかりしている印象を持った。財政出動が必要にもかかわらず財政緊縮を求めたり、制度が整っていない中金融自由化を求めて事態を悪化させるということが目立ち、それらに対する検証も行われていない。融資が必要な国もIMFへの支援を求めず、自力で資金を調達するというのも頷ける。2013/05/18
tiki
2
IMFの設立の歴史やIMFの経済プログラムの矛盾について、かなり否定的に書かれた一冊。IMF融資のコンディショナリティーの特徴や矛盾については、勉強になった。古典派の経済学者による別の視点のIMF論についても読んでみたいかも。教科書的な書き方なので、意外と読むのが大変でした。2010/05/22