内容説明
固定的な身分社会と思われていた江戸時代だが、実は藩主が家臣に更迭される「主君押込」や、有能な下級武士を抜擢する積極的な能力主義がうまく機能していた。武士道の根本規範は、減私奉公ではなく自立の精神と組織の繁栄追及であることを明らかにし、徳川吉宗、上杉鷹山などの改革や、幕末の幕府官僚の例を挙げて、新しい武士像を提示する画期的な組織論。
目次
序章 武士道とは何か
第1章 赤穂事件と武士道
第2章 自立の思想としての武士道
第3章 武家屋敷駈込慣行
第4章 主君「押込」の慣行
第5章 日本型組織の源流としての「藩」
第6章 名君の条件―十八世紀の組織改革と指導者像
第7章 能力主義のダイナミズム
第8章 封建制度の日欧比較
第9章 日本型組織の過去・現在・未来
第10章 伝統文化とグローバリズム―新しい日本社会を求めて
著者等紹介
笠谷和比古[カサヤカズヒコ]
国際日本文化研究センター教授。1949(昭和24)年神戸生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院博士課程修了後、国立国文学史料館助手、国際日本文化研究センター助教授を経て現職。文学博士。専攻は日本近世史。主著に『主君「押込」の構造』(サントリー学芸賞)など
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感想・レビュー
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ちくぜん
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映画やドラマで人々に滅私奉公に代表されるような固定概念として定着している「武士道」というものを、主君押込などの例を通して意外な発見に導いてくれる。終身雇用制や年功序列といった、平成以後否定的に捉えられるようになった従来の日本的制度を、真の武士道精神を通して見直すきっかけにもなりそうである。2015/08/04
shinoper
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日本は明治以降、欧米の技術を取り入れる事で発展をしてきた。一見すべて外国の技術のおかげのように思いがちであるが、本当にそうであるならば、日本の製品が世界で売れるはずはない。日本が経済大国になれたのは、伝統的な日本の良さがあったのは間違いない事実であろう。「ヨーロッパでは」とか、「アメリカでは」という魔法の言葉に惑わされる事はもうやめにしなくてはいけない。2009/01/20
かふう
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○ 良書。2009/01/12