内容説明
誰もが口ずさんだことのある歌を、現代の視点でどこが面白いのかを解説。和歌への理解が深まります。
目次
秋の田の(天智天皇)
春過ぎて(持統天皇)
あしびきの(柿本人麻呂)
田子の浦に(山部赤人)
奥山に(猿丸大夫)
鵲の(中納言家持)
天の原(阿部仲麻呂)
わが庵は(喜撰法師)
花の色は(小野小町)
これやこの(蝉丸)〔ほか〕
著者等紹介
水原紫苑[ミズハラシオン]
1959年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。86年より春日井建に師事、師の没後は単独で活動。89年第一歌集『びあんか』(雁書館)により第三四回現代歌人協会賞受賞。『客人(まらうど)』で第一回駿河梅花文学賞、『くわんおん(観音)』で第一〇回河野愛子賞、『あかるたへ』(以上、河出書房新社)で第五回山本健吉賞・第一〇回若山牧水賞受賞。2017年「極光」三〇首で短歌研究賞を受賞。18年『えぴすとれー』で第二八回紫式部文学賞、21年『如何なる花束にも無き花を』(以上、本阿弥書店)で第六二回毎日芸術賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
105
千年もの長きに渡り31文字の歌が今に至るまで詠まれているのは、奇跡的なこと。カルタや学校の暗誦で、若い頃に記憶に留めることは一生の財産になるに違いない。歌人ならではの視点で、音楽であり、実存であり、エロスであるそれぞれの歌の魅力を語る口調が確かだ。撰者である定家が歌を選ぶのに、当然鎌倉幕府との関係も考慮していただろう。天武天皇と額田王を入れず、天智天皇から始め、最後は承久の乱で島流しになった後鳥羽院と順徳院で終えるのも、百人一首自体が王家のもののあわれを感じさせるように思える。正月はやはり百人一首ですね。2022/01/10
ピロ麻呂
36
歌人水原紫苑さんによる訳、季節の歌でも恋歌解釈、分かりやすい解説がとても良い✨百人一首の本はたくさん読んだけど、古典の教授や研究家が書く本だとありきたりの訳で、文法や歴史背景の解説がほとんど。エッセイっぽくて、読みやすい百人一首解説本としてオススメです🍀2021/03/25
ほりん
30
歌人水原紫苑が、歌の意味、作者の出自、歌の背景となる故事など、簡潔に解説してくれる。筆者の率直な感想があるのも嬉しい。例えば「おそらく道綱母のような生真面目な人には、生きづらい世の中だっただろう。現代に生まれていたら、結婚などしないで、才能をじゅうぶん生かせただろうに、気の毒なことである。」など。筆者は「私にとって歌とはまず音楽であり、実存であり、そしてエロスである。」と言う。百首を、正に生きた人の声として届けてくれる。選者・藤原定家がいかに選出したかの考察も面白い。手元に置いて、折々に読み返したい。2021/05/21
崩紫サロメ
26
敬愛する歌人・水原紫苑による百人一首の解説書。一首2ページで作者や背景の解説、関連する歌に言及するオーソドックスな面もあるが、やはり魅力は現代短歌を詠む者、同じ歌人としての共感や反発が素直に綴られている点。そして塚本邦雄や岡井隆といった現代短歌の巨匠、また笹井宏之や大森静佳といった若い世代の歌人の歌を引きだしてくる点。おそらく本書を手に取る人の多くは現代短歌というものに接したことがない人が多いであろう。百人一首を通じた現代短歌入門書という風にも読めて、面白い。2021/06/06
かふ
22
表紙の明るそうな少女漫画に騙されてはいけない。かなり情念系の憑依タイプの解説で闇が深いのだ。歌人でもあるしね。百人一首だけではなく、それに纏わる歌や文学(能や歌舞伎も)紹介していて、歌人自ら歌の世界にどっぷり潜入していくタイプ。「個人的には歌は色香、いいかえればエロスが命だと思う」という言葉にあるようにどこまでも歌(言霊)に寄り添っていく作者のあり方は、黄泉(詠み=読み)と死者の世界に繋がる。さらにその読みに於いて選者である藤原定家との三角関係(本妻から横どる愛人のような)。初心者よりは二冊目にどうぞ。2021/04/29