出版社内容情報
「おそらく最後の小説を、私は円熟した老作家としてではなく、フクシマと原発事故のカタストロフィーに追い詰められる思いで書き続けた。しかし70歳で書いた若い人たちに希望を語る詩を新しく引用してしめくくったとも、死んだ友人たちに伝えたい」(著者・『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』)。国家の巨大暴力に対抗するため、個の単位の暴力装置を作る老人を描く『さようなら、私の本よ!』
【収録作品】
さようなら、私の本よ!
晩年様式集(イン・レイト・スタイル)
──カタストロフ 3.11
内容説明
国家の巨大暴力に対抗するテロリズムを描く『さようなら、私の本よ!』と、国家の巨大暴力がもたらす原発事故を描く『晩年様式集』を収録。晩年の円熟を拒否して社会・時代に抵抗する。ノーベル文学賞作家が企てたテロル、予見したカタストロフ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OHNO Hiroshi
3
「さようなら、私の本よ!」ミシマ事件、三島由紀夫、ドストエフスキー「悪霊」「白痴」そして「セヴンティーン」発表の後、三島由紀夫からもらった手紙。 「晩年様式集」In Late Style 結果、読めずに、流して・・・終了。2019/07/22
ブルーツ・リー
2
晩年様式集。 今までもっぱら小説に置いて「書かれる」のみの存在だった大江健三郎の家族たちが、ひとつの暴力としての、作家の特権的地位に対し反旗を翻し、作家に対して、残された時間が少ない事。その短い時間で、生涯に渡った抑圧関係について、反転を迫られる。 この行為について、権威が、何者かを抑圧し続けているのだ。とする大江の思想として論理的に一貫させるように、大江はそれを受け入れる。 抑圧者の生き方が決して変えられないものとしても、人類としての生き方の在り方は変えられるとの信念を、どこまでも貫いた作家だろう。2024/01/02