出版社内容情報
漢字の成り立ちからその歴史を振り返り、今日では使われなくなった文字や日本独自の漢字などを紹介しながら、漢字の奥深さを案内する中国の文字を、われわれは「漢字」と呼ぶ。言うまでもなく、「漢族の文字」という意味である。いまでこそ、中国でもそう呼ばれるが、じつは中国で「漢字」という言葉が使われるようになったのは、それほど古いことではない。それは、モンゴル高原に起源を有する元王朝が中国を統治して以降のことである。それまでは、「漢字」は中国では「文字」と呼ばれていた。
「中国」とは、「世界の中心」を意味する言葉である。世界有数の歴史と国土を有する「中国」で生まれた文明を創り出した漢族にとって、わざわざ自らの文字を「漢字」と呼ぶ必要はなかったのである。
翻って、わが国日本にとって、漢字はなくてはならないものである。日本独自の表音文字である「ひらがな」や「カタカナ」が漢字を元にしてできたことはよく知られているが、漢字抜きにして日本の歴史・文化は成立しえなかったかもしれない。
漢字が重要な位置を占める日本語は、和歌や短歌に代表されるように、文字や言葉を使って「遊ぶ」ことで、その表現や語彙を増殖させていった。その中心にあったのは、漢字だったのである。
日本語のおもしろさ、不思議さは、漢字なしには考えられない。それゆえ、漢字には、日本の文化や智恵が凝縮されているのである。と同時に、漢字を知ることは、中国、日本のみならず、漢字文化圏と呼ばれる東アジア全体の文化を知ることにもつながっていく。
たしかに、古代の日本にとって、漢字は中国からの借り物であったかもしれない。しかし、漢字は日本語をつくるためには必要不可欠なものであった。漢字によって、古代の人々は心を豊かにし、さまざまな思いを他者に伝えていったのである。
本書は、漢字の成り立ちからその歴史を振り返り、今日では使われなくなった古代の文字や日本独自の漢字「国字」などを紹介しながら、漢字のおもしろさ、奥深さを案内していく。
第一章 漢字は千変万化する
第二章 すばらしい漢字のカタチ
第三章 音も変わっていく
第四章 解釈すれば、あら不思議
第五章 漢字と日本
山口 謠司[ヤマグチ ヨウジ]
著・文・その他
目次
第1章 漢字は千変万化する(「漢字」という言葉;「文」と「字」 ほか)
第2章 すばらしい漢字のカタチ(「六書」という方法;象形 ほか)
第3章 音も変わっていく(音節がひとつしかない中国語;アクセントがないとダメ ほか)
第4章 解釈すれば、あら不思議(どのように物をみるのか;思い、邪無し ほか)
第5章 漢字と日本(日本語が書ける;万葉仮名の借音 ほか)
著者等紹介
山口謠司[ヤマグチヨウジ]
1963(昭和38)年、長崎県生まれ。大東文化大学文学部准教授。博士(中国学)。フランス国立高等研究院大学院に学ぶ。英国・ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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