大清帝国と中華の混迷

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  • サイズ B6判/ページ数 374p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062807173
  • NDC分類 209
  • Cコード C0322

出版社内容情報

「漢字と儒学」は中国を統一できなかった
乾隆帝の巨大な遺産が今もこの国を悩ませている

北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。「中華の文明」ではなく、チベット仏教に支えられた、輝ける「内陸アジアの帝国」が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。

■満洲の雄・ヌルハチが草創し、辛亥革命に倒れた大帝国の輝きと崩壊!
現在の中華人民共和国の広大な国土は、大清帝国に由来しています。では、この大領域を「北方の異民族」がいかにして手に入れ、維持したのでしょうか。また、漢人たちはこの「異民族支配」にどう対応したのでしょうか。康熙帝・雍正帝・乾隆帝の最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描きます。

■「巨大な中国」を実現したのは、「中華文明」ではなく、チベット仏教だった!
清は「東アジアの帝国」であるより先に、「内陸アジアの帝国」でした。そして、彼らがチベットやモンゴル、さらに今日の新疆ウイグル自治区を治めた原理は、「漢字と儒学」に代表される「中華文明」や「中華思想(華夷思想)」ではなかったのです。従来の中国史や現代中国論では見落とされがちだった、いまの中国が抱える「最大の矛盾」を、歴史的に解き明かします。

■「万里長城」「天安門」が象徴する歴史の真実とは? 「現代中国」を見る眼が変わる!
台湾、琉球、朝鮮、そして日本――。清代末期の混乱のなかで「東アジア」の国々は何を共有し、何を争ってきたのでしょうか。そもそも「東アジア」という地域イメージは、共有することができるのでしょうか。春節に賑わう横浜中華街を皮切りに、旧満洲、承徳、敦煌、ラサ、ソウル、台北など、各地を訪ね歩いた著者・平野氏は「清末の諸課題は、未だに解決されていない」と述べています。



序章 「東アジア」を疑う
第1章 華夷思想から明帝国へ
第2章 内陸アジアの帝国
第3章 盛世の闇
第4章 さまよえる儒学者と聖なる武力
第5章 円明園の黙示録
第6章 春帆楼への茨の道
終章 未完の清末新政


平野 聡[ヒラノ サトシ]
著・文・その他

内容説明

北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。「中華の文明」ではなく、チベット仏教に支えられた、輝ける「内陸アジアの帝国」が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。

目次

序章 「東アジア」を疑う
第1章 華夷思想から明帝国へ
第2章 内陸アジアの帝国
第3章 盛世の闇
第4章 さまよえる儒学者と聖なる武力
第5章 円明園の黙示録
第6章 春帆楼への茨の道
終章 未完の清末新政

著者等紹介

平野聡[ヒラノサトシ]
1970年、横浜市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。東京大学大学院法学政治学研究科准教授。博士(法学)。専門はアジア政治外交史。博士論文を出版した『清帝国とチベット問題』(名古屋大学出版会)で、2004年にサントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ピオリーヌ

11
やはり日清戦争前夜の内容が興味深い。朝鮮をめぐり李鴻章と日本は壬午事変をはじめ激しく争う中、李鴻章は「皇帝が臣下・属国を優遇する」という「美名」のもと、清の貿易商に著しく有利な協定を「中朝商民水陸貿易章程」を締結した。この李鴻章や洋務官僚たちの発想を「遅れてきた帝国主義」とする例えは腑に落ちた。他、(敢えてダイチン・グルンと呼びたい)大清帝国を内陸アジア的帝国の側面から見、チベット仏教をめぐる記述もある。2021/03/01

MUNEKAZ

5
「中華」と「チベット仏教」を両軸にして大帝国を作り上げた清が、18世紀末からの激動の中で、いかにその意識が変容していったかが描かれている。イスラーム世界のオスマン帝国もそうだけど、専制的だけど同時に「ゆるい」統治でもある帝国に、ヨーロッパ世界からやってきた国民国家や主権国家という異質のルールが適用されるようになったからこそ色々と齟齬が出てきたのであろう。その国の人々のアイデンティティというか、自分と国とをどう位置付けるかは、他の国からの影響や圧力を受けやすいというかがよくわかる。2016/11/22

デューク

3
講談社の創業100周年記念出版として発行された、全21巻の人類の歴史。第17巻は近代中国の枠組みを作った国、清帝国の興亡について。 清は、中国の歴史上特異な帝国である。それは「外国人」が中華を支配しながら、中外一体という理論で「外国人」の支配を正当化したことにも表れている。現代に通じる、中国の行動様式を形作った王朝である清帝国。その歴史を学ぶことは、現代の中国と付き合う上でも、必須の教養と言っても過言ではないかもしれない。おすすめ2018/05/23

山田K

3
数年ぶりの再読。著者の立ち位置が絶妙で理想的です。明から清を経て近代中国となるまでの歴史を中心に語られていますが、内容は歴史的事実に留まることなく、華夷思想の形成や儒教、仏教の捉え方、他民族との軋轢、政治思想の矛盾と、著者の中立的な考察が多分に含まれ読みごたえはたっぷりです。現代においてもなかなかに捉え難い国家の根源を垣間見ることができます。そこに近現代のカオスが加わればそりゃあ一筋縄ではいかないだろうと、寧ろいまあの大国を何とか形成出来ているということにすら奇跡を感じます。2017/02/19

mit

3
儒教的な中華世界とチベット仏教を核とした内陸アジアに、二重の支配論理を用いてパックス・マンチュリアを作り出した清であるが、内政、外交ともに西洋近代国家の概念とはマッチせず、「中華」概念の抱える矛盾は現在まで引き継がれている。明から清へは単なる王朝交替ではなく、広大な版図を複数の論理によって維持しようとした清朝を再認識することが、現在に至る東アジア史を理解する上で鍵となる。 モンゴル・チベットと中華世界との関わりについて双方の視点から取り上げられており、近代「中国」史としては新機軸と言えるのではないか。

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