講談社選書メチエ<br> 魔女狩り―西欧の三つの近代化

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講談社選書メチエ
魔女狩り―西欧の三つの近代化

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  • サイズ B6判/ページ数 266p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062585743
  • NDC分類 230.5
  • Cコード C0322

出版社内容情報

視覚の近代化、自然認識の近代化、周縁者排除による近代化。視覚文化論、哲学、宗教学の知見で、魔女狩りと近代成立の関係を解明する

15世紀後半にはじまり十八世紀後半まで、トータルで4万人以上が狩られた魔女たち。
中世ではなく、近代の黎明期に魔女狩りが大流行したのはなぜなのか?
近代社会初頭に起こったことを考えると、「魔女狩りとは何だったのか」という問いかけは、「ヨーロッパ近代とは何なのか」という問いを呼び込む。
本書は、魔女狩りとヨーロッパ近代誕生の機制の関係を新視点から明らかにします。その視点とは、三つの近代化です。「視覚を中心とする感覚の近代化」「自然認識の変容と近代化」「他者・社会的周縁者の排除と近代化」。
視覚文化論、哲学、宗教学的な知見をふんだんに盛り込んで、魔女狩りの歴史研究を通したヨーロッパ近代化論、および人間存在と人間文化を探究した冒険的著作です。

はじめに

第一章 異端から魔女へ――中世末
     カタリ派と「魔女」/異端審問と魔女裁判/ユダヤ教徒と「魔女」/ワルド派と「魔女」/本当に見たのか/年代記作家フリュントの報告/十五世紀の教会改革者ニーダー/『蟻塚』における魔女情報の提供者/『蟻塚』の「魔女」記述/『司教法令集』と「魔女の飛行」/ニーダーの女性観  /マルタン・ル・フラン『貴婦人たちの擁護者』/「反自然」としての魔女の行為/想像から現実へ  

第二章 魔女熱狂時代前夜――十五世紀
     『魔女の槌』/クラーメルの魔女狩り/『魔女の槌』における視覚と経験/「超・自然」と「脱・自然」/他者としての女性/モトリールの魔女信仰批判/ドミニコ会・フランシスコ会の魔女論争/スピーナの『魔女探究』/ルネサンス人文主義者の魔女論争/法学者アルチャーティの魔女論/オカルト哲学者アグリッパと魔女弁護/終末観の瀰漫と宗教改革の時代/カルヴァンの場合/視覚メディアと魔女表象

第三章 バロック時代の中の魔女裁判――十六・十七世紀
     視覚とバロック/王権と魔女狩り/ド・ランクルという人間/フランス王国の周縁地バスクと魔女/バスク人の生業/悪魔化される民衆文化/女は魔法使いである/バスク人女性と魔女/ド・ランクルの「視覚的・認識論的錯誤」/魔女・悪魔と「反・自然」/魔女と国家/王国の自己同一化と魔女の意味/バロック・サバト/サバトにおける聖体奉挙/ヴュルツブルクの魔女とバロック/バロック時代の国家・教会と魔女裁判/魔女裁判の方法/魔女の処刑方法

第四章 魔女裁判の終焉と西欧近代の始まり――十七世紀後半以降
     『世界図絵』と視覚/『世界図絵』における魔女描写  /十七世紀と視覚の特権化/近世の視覚モードとしてのバロックとデカルトとベイコン/デカルトと魔女信仰/バルタザール・ベッカーの魔女裁判批判書『魔法にかけられた世界』/観察・調査と自然/クリスティアン・トマジウスの魔女裁判批判/物体への眼差し/調査の必要性と魔女裁判の無益/ベイコンと魔女信仰/実験と悪魔の共存/驚異と自然/十七世紀の自然観/ロックにとっての魔女信仰/宗教的寛容の時代/生き続ける他者としての女性

おわりに
参考文献
索引

【著者紹介】
黒川正剛(くろかわ・まさたけ)
1977年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程修了。 現在、太成大学人間学部教授。専門は、宗教学・西洋史。
著書に『呪術の人類学』(人文書院)、 『魔女とメランコリー』(新評論) 、『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』(名古屋大学出版会)などがある。

内容説明

十五世紀前半~十八世紀後半、四万人が魔女として殺された。中世ではなく、近代黎明期に魔女狩りが大流行したのはなぜか?「魔女狩りとは何か」という問いは、「ヨーロッパ近代とは何か」という問いでもある。「視覚の特権化」「科学的自然観」「他者・周縁者の排除」。歴史学、文化論、哲学、宗教学を横断して、魔女狩りの意味論を徹底的に探究する。

目次

第1章 異端から魔女へ―中世末(カタリ派と「魔女」;異端審問と魔女裁判 ほか)
第2章 「魔女熱狂」時代前夜―十五世紀(『魔女の槌』;クラーメルの魔女狩り ほか)
第3章 バロック時代の中の魔女裁判―十六~十七世紀(視覚とバロック;王権と魔女狩り ほか)
第4章 魔女裁判時代の終焉と西欧近代の始まり―十七世紀後半(『世界図絵』と視覚;『世界図絵』における魔女描写 ほか)

著者等紹介

黒川正剛[クロカワマサタケ]
1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術、東京大学)。現在、太成学院大学人間学部教授。専門は、西洋中・近世史、宗教史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こきよ

36
多くの人が、ネットをはじめ、各種メディアの情報を甘受しているに過ぎない、現代社会は、神学者や、異端審問官の見解によって魔女狩りが横行していた、かの時代と、本質的には似通った部分もあるのではないのだろうか。2014/07/06

小木ハム

14
15~17世紀、西欧では未だ自然とファンタジーがごっちゃの時代。カトリックの中で異端の噂⇒魔女信仰⇒大真面目に裁判が行われていた。魔女とは言うが実際には男女混合で、割合として女性が多かっただけ。旧約聖書のイヴは魔女の原型とされ、精神的に不安定だから悪魔の誘惑に負けるのだという当時の女性観(不安定なのは生理症状や更年期障害の事だろう…生理学の発展は19世紀以降だ)で女性=他者という差別が根付いていた。また海には魔物が棲み、山は未開の故郷とされ忌み嫌われており、付近に住む人(バスク人)を差別する風潮もあった。2020/11/14

水菜

6
魔女狩りをヨーロッパの近代化と言う歴史的な視点から捉えた本。もっとおどろおどろしいことが書いてあると期待したのだが、ちょっと違ったみたい。女性を「聖女 」と「魔女」とに二分する思考や、女性=他者として差別してきた歴史はとても興味深い。現代でも女性が社会の周縁に置かれているという状況は完全になくなっていないだろう。日本での視覚と近代化の関係を考えるのも面白そう2014/07/16

海野

5
何故魔女狩りが広がり、何故収束したのかを詳細な資料と共に宗教史、思想史と照らし合わせによるアプローチで解読を試みている。初期の魔女狩りがドミニコ会・フランシスコ会の対立から「自説の正しさを証明するためにむしろ魔女が出て来て欲しい」という空気がの元に行われていたのが窺い知れる下りが色々やるせない。2014/07/21

4
2014年刊行。悪名高い「魔女狩り」の中でどんなことが行われたかという点は最小限の扱いでして、「魔女狩り」をめぐる理論の変遷がテーマであります。中世の知識人の間では「魔女」の実在は案外に迷信扱い、肯定論、否定論の間で論争が盛んに交わされていたのが、「真実よりも真実らしさ」が歓迎されるバロック主義の近世を迎えたことで「魔女狩り」支持の一辺倒に。「魔女狩り」否定論が保守主義、時代遅れとされ、肯定論が現実的で進歩的な考えだとされていたのはまるで現在のトンデモ歴史や陰謀論の流行ぶりを見るよう。星4つ。2022/07/22

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