内容説明
「私の陶芸の仕事は、京都で道を見つけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った」日用品の素朴な美を認め、益子に築窯、制作し、民芸運動の創始者として活動した著者が、河井寛次郎、リーチ、柳宗悦、富本憲吉ら生涯の友や、志賀直哉、梅原龍三郎等との出遇い、若き日のことなど半世紀に亘る陶芸人生を綴る。日常雑器を世界の益子焼とした著者の創造精神溢れるエッセイ集。
目次
1 目と手(一瞬プラス六十年;味と感じ;李朝陶器の形と絵 ほか)
2 窯と旅(リーチ・ポッテリー;ギル訪問;倉敷の印象 ほか)
3 人と作柄(河井のうけ方;河井との五十年;「コメニシアフレニシ」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
A.T
18
大正15年の正月、高野山の雪道を登りながら柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司の3人で「民衆の使う工芸品」を詰めて「民芸」と定めた逸話をはじめ、民芸運動に関わった人それぞれの感性や仕事の仕方をまさに、無盡蔵な蔵出しのように語られる。濱田自身は栃木県益子町にアトリエを構えた陶芸家だったが、引きこもってただ黙々と轆轤をまわすタイプではなく、世界中のさまざまな工芸品の感性と技術への関心を常に絶やさず、人にも出会うことで自らの血肉としてきたたくましい工芸家の姿が浮き彫りになる。2023/12/27
kino
1
筆者の掲載記事のまとめ本。率直な感想、濱田さんは説明がとても上手なことに驚いた。陶芸初心者にも想像しやすい説明、表現の仕方、いかに他者作品が素晴らしいかということ、それが全てにおいてとても丁寧に綴られている。芸術家特有の『自分の世界』をただ述べているのでは無いということが、筆者の考えが素直に自分の中に浸透してくるのを感じ、正直【棚ボタ本】だった。歳とともに身に入る教養を持って尚【計る知識の物差を持たずに、じかに直接ものに打たれて、負けたと思うものを持ちたいのです。】なんて言葉を言える人生をぜひに歩みたい。2015/04/06