内容説明
近代日本幕開けの原動力は何か。西洋列強の脅威にさらされた日本は国際社会に如何に参加していったか。本書は、維新期の四年間を我国で過した英国外交官の眼が捉えた臨場感あふれる記録である。明治天皇・徳川慶喜との会見、時代を先導した藩主や志士達との交流、外国人襲撃事件、維新の波の中に迸り出る民衆の底力等を鮮明に綴る。「外圧」にゆれる現代日本にとっても示唆に富む貴重な史料である。
目次
第1章 日本への赴任
第2章 将軍との会見
第3章 加賀から大坂への冒険旅行
第4章 内戦と備前事件
第5章 容堂公と堺事件
第6章 天皇の謁見
第7章 大坂での外交交渉
第8章 旧体制から新体制へ
第9章 エジンバラ公の訪日
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Akihiro Nishio
22
「アーネスト・サトウ氏の本が講談社だと1冊にまとまっている、お得」と思って読んだらリーズディルというサトウ氏と同時期に来日した別の外交官の本でした。しかし面白かった。(まだ読んでいないが)サトウ氏と違って、戦争とは関りが薄いようで長州や薩摩に関する記述は少な目。一方で、貴族だからか宮廷儀礼には異常なほど関心があって、観察、考察ともに深い。印象深いのはフランスの一団が襲われて、その犯人たちが切腹するシーン。腹を掻っ捌き、腸を引きずり出しながら呪詛を吐くため気味悪がってフランス人が途中で止めさせたというくだり2017/02/07
若黎
9
いやー、予想外に面白いというか、楽しめた。アーネスト・サトウの『一外交官の見た明治維新』も途中まで読んでいたけれど、こっちのほうが読みやすかったなー。 その後にコンノート殿下の随員で謁見したときは勲章を着けた礼服やドレスの貴婦人たちを見て、以前の宮廷装束ではなくなっていることを惜しんでいることが、印象に残る。民族衣装の最上礼服で出迎えるのもいいんじゃないか?と思う一節だった。『ミッドフォード日本日記』も読みたいなあ。2021/05/16
槙
7
幕末の日本に滞在した英国外交官ミッドフォード卿の回顧録。いつ攘夷派に襲撃されるかわからないという情勢下で江戸、横浜、加賀、大津、大坂などを訪れ、ついには京都で明治天皇の謁見を受ける。日本人でも知らない当時の日本の景色、町並みが描かれていておもしろい。好意的に日本のことを書いてくれているので、この後の歴史で日本と英国の関係がどうなったかを考えると少しさみしい気がする。特にビクトリア女王の次男であるエジンバラ公の訪日をうけ、明治政府の依頼で準備や滞在中の案内役を務める九章が良かった。2015/11/01
isao_key
7
年表を見るとミットフォードは1866年10月16日に来日し、1870年1月1日に日本を去っている。まさに幕末激動の時代の生き証人であった。本書は日記ではなく、思ったこと、印象に残ったことを書き残した覚え書である。この人は語学の才能があったようで、親友であったアーネスト・サトウからも来日して1年しかならないのに、誰の助けも無く日本語で会話をしていると驚かれている。日本に来る前北京の英国公使館で1年間中国語をみっちりやったからか、日本語の文章を読むのも不自由がなかったようだ。また富士山のすばらしさを称えている2013/02/28
CAESAR_YOKOHAMA
6
歴史の愉しみの一つに、同じ事件や出来事についての多様な目撃者や当事者毎の環境、事象、考えを通した、多様な視点、見方を知るということがある。日本史上最も重要な出来事の一つである明治維新にも、薩摩視点、長州視点、土佐視点といった新政府中心の視点と徳川家を初めとする幕府側視点といった様々な観点があり、それぞれの考えを知ることで、その大動乱の理解が深まる。しかし、そうした視点を「日本視点」としたならば「日本外視点」というものも同時に存在する。2013/01/06