内容説明
明治維新の指導者、西郷隆盛は、西南戦争によって賊名を背負ったまま死んだ。１８８９年、大日本帝国憲法発布を機に名誉が回復され、上野公園山王台に銅像が建てられることになった。このとき、言葉こそ残すべきだとして、旧庄内藩の人びとによってまとめられたのが本書である。偽りのない人生を生き、そして死んでいった西郷の言葉は、新政府への批判を含みながら、国家や為政者のあるべき姿を示し、人として広い度量と高潔な精神の必要性を説く。
目次
１ 遺訓（天皇の政府の役人になり、政治を行うということは、；賢人がすべての役人を統轄して、；政治の大要は、 ほか）
追加（事件に遭遇したり、あるいは何か物事を担当するときに、；漢学を勉強したものは、）
解題（『南洲翁遺訓』の成立事情；庄内藩士の薩摩行き；『南洲翁遺訓』の序文および跋文 ほか）
著者等紹介
猪飼隆明［イカイタカアキ］
１９４４年福井県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。熊本大学文学部教授・大阪大学大学院教授を経て、大阪大学名誉教授（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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CherryBlue
10
庄内藩の西郷さんを慕う方々がその言葉をまとめたものとの事。教養ある言葉の数々です。道義を中心に据えた考え方を示されており、芯から自分を修めて来られていた方だと感じる。克己、甘えるなという言葉が刺さりました。2010/06/12
tunehiro
5
西郷の言葉はもちろん現代においても重要な箴言であるが、本書は解説が秀逸。明治の世相、政局、外交から、儒教から陽明学まで、西郷の至言の背景をも把握できる。2010/11/13
Taro Yamada
4
肝の座った生き方を学ぶため購入。最初はPHPのものを購入予定だったが、書き下し文がなく日本語訳のみだったため書き下し文のあるこちらに変更。 「命ちもいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕抹に困るもの也」で始まる有名な言葉や、「人ではなく天を相手にせよ」と説く姿勢が印象深かった。内容的には中国古典の影響も大きいように感じたが、それを実践するにあたり「肝の座った生き方」を強く感じた。私は思考が先行する傾向があるので、そういう意味でも読んでよかったと思う2017/01/26
鈴木貴博
3
南洲翁遺訓を、現代語訳と解説付きで読む。南洲翁遺訓は、西郷を慕う旧庄内藩主、旧庄内藩士たちが、明治六年政変を挟む明治初年に西郷から聴いた”遺訓”をまとめ、西郷の名誉回復後の明治二十三年に出版したもの。”追加”を入れても43、それぞれ概して短い文章の”遺訓”である。よく知られているものを含め、それぞれ面白く興味深い語録となっている。必ずしも西郷にまつわる様々な謎に解決が与えられる訳ではないが、これ自体多様な背景を有し、これを通じて時代の精神、文化を理解するという点からも、歴史の見方を豊かにする一冊だと思う。2018/02/03
いつき
3
本書は主に為政者の心構えを説いた西郷隆盛の言葉を残した物である。薄い上に同じことを繰り返しているので頭に入れるのは容易い。 その分解説で２倍に膨らましているが、この解説が微妙。古典や漢籍を解説しているところはよいが、大義の話になるとすぐ911テロやその後の戦争の話にもっていきアメリカ叩きを始める。意見には同意するが、それは本書の解説に書くことではない。 方丈記といいビギナーズクラシックの解説者は分をわきまえない傾向でもあるのだろうか2012/05/25
