内容説明
そういえばあまり見たことがない生き物、モグラ。彼らはどんな生活をいとなんでいるのか。世界にはどんなモグラが生息しているのか。身近なのに謎だらけの地中生物に魅せられた若きモグラ博士が、形態分析から進化まで、モグラと生物研究の世界へと誘います。モグラだけでなく、生物学者の実態に関心がある中高生にもオススメです。
目次
1 モグラ博士のモグラ紹介―生態学的モグラ入門
2 僕がモグラにハマるまで―研究者への道
3 世界のモグラを探しに―フィールドワーク入門
4 モグラの体を調べつくせ!―分類学入門1 形態分析
5 モグラの来た道―分類学入門2 染色体・DNA分析
著者等紹介
川田伸一郎[カワダシンイチロウ]
1973年岡山県生まれ。91年弘前大学理学部生物学科入学、95年卒業。同年同大学院理学研究科生物学専攻修士課程入学、97年修了。自宅のクリーニング店で一年間勤務ののち、98年名古屋大学大学院生命農学研究科入学。翌年より一年間ロシアの科学アカデミーシベリア支部に留学。2002年農学博士号取得。現在、国立科学博物館動物研究部研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ホークス
41
2009年刊。モグラ研究者の書いた興味深いモグラの話。モグラは地中にいるため研究が進んでいない。飼育下での繁殖もできておらず、その理由の一つは雌雄とも単独生活で縄張りを守るため。他個体に対しては威嚇し、引っ掻いたり噛みついて戦う。完全な動物食で、餌はミミズや虫。一匹のモグラのテリトリーは田んぼ1〜2枚分だそうで、思ったより広い。日本には数種類が棲んでおり、近縁のヒミズ類もいる。モグラが棲めるのは、落ち葉から柔らかい土壌ができる温帯だけ。フィールドワークの話も盛りだくさん。知らない事ばかりだった。2023/11/19
そり
18
モグラとはけっこう可愛いものである。丸っこくて、ふわふわしてて、目は皮膚に覆われていて、そんなに速くない。食べるものは虫であるから、畑の野菜なんかはかじられないのだ。ただ、そのトンネルが鼠に再利用されたり、田んぼの水の抜け道になることはあるようだ。良いことの面としては、高次捕食者であること。コガネムシ科や蛾の幼虫を食べ、想像するだに恐ろしい害虫の異常発生を抑えてくれる。そんな彼らの縄張は田んぼ一、二枚ほどの広さで個体が多い感じはしない。家庭菜園をやるぐらいの者にはとりあえず憎めないやつなのかもしれない。2018/05/06
たくのみ
13
モグラに興味を持ち、日本一のモグラ研究者になった川田先生が語る、知られざるモグラの世界。ヒミズとモグラの違い、モグラは肉食、草の根を食べるのはトンネルに入り込んだ他の生物。尖閣諸島のみに住む謎のモグラ、センカクモグラの話。アメリカのモグラ研究者とのモグラ獲り対決。まさに雑学の王道。こういう生き方、好きだなぁ。2016/06/29
とんかつラバー
12
マスコットキャラなどで慣れ親しまれているモグラだが、実際にモグラを見た人は多くない(私は見た事ない)ジュニア文庫だが、内容は濃くて生物関係に進路を進めたい中高生向け。研究のためにモグラを捕まえる事から始まるがこれが難しい。学者というと研究室の中でじっとしてるイメージだが実際は冒険のようなフィールドワークと現地人とのコミュニケーション能力が重要。現地の人と同じものを食べ、歌って仲良くなる話が良い。ちなみにモグラの学名はモゲラだが登録の際の手違いらしい2024/03/03
こぺたろう
11
岩波ジュニア新書、5冊目。生きた野生のモグラって、そういえば見たことないなあ。そんなモグラの興味深い生態がたくさん紹介されています。捕獲方法が変わっていて、面白かった。飼育もされているモグラですが、意外なことに繁殖の様子を記録した例はないらしい。それを観察できたら、新しい知見になりそう。生き物って、まだまだわからないことだらけ。2020/02/09