出版社内容情報
およそ二五〇〇年前、古代ギリシアに生まれた民主政。順ぐりに支配し、支配されるという人類史にかつてない政体は、いかにして考え出され、実施されたのか。公共性を、一人ひとりが平等にあずかり、分かちあうことを基本にして古代の民主政を積み重ねた人びとの歴史的経験は、いまを生きる私たちの世界とつながっている。
内容説明
およそ二五〇〇年前、古代ギリシアに生まれた民主政。順ぐりに支配し、支配されるという人類史にかつてない政体は、いかにして考え出され、実施されたのか。公共性に、一人ひとりが平等にあずかり、分かちあうことを基本にして古代の民主政を積み重ねた人びとの歴史的経験は、いまを生きる私たちの世界とつながっている。
目次
第1章 民主政の誕生
第2章 市民参加のメカニズム
第3章 試練と再生
第4章 民主政を生きる
第5章 成熟の時代
第6章 去りゆく民主政
著者等紹介
橋場弦[ハシバユズル]
1961年札幌生まれ。1990年東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。古代ギリシア史専攻。東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
109
古代ギリシア人が2500年前に民主政という政治スタイルをとったのはそうなる必然があった。英語のデモクラシーは民衆(デモス)の権力(クラトス)を意味するギリシア語が由来。民主政は都市国家アテナイで紀元前501年に誕生し約180年以上も続いた後、ローマに征服されて終焉を迎えた。近代の参政権がすべての国民に保障されたのは1919年以降で100年の歴史である。アテナイはペルシア帝国との戦いで民主政を成長させたが、周囲の国々との関係で政治システムを構築する必要がある。東大文学部の講義を基にした内容で読み応えがある。2022/11/08
skunk_c
77
古代ギリシアの歴史をアテナイの民主政を軸に語る。アテナイでは徹底した直接民主政(いわゆる公務はほぼ抽選で決められ、任期は1年、しかも原則再任はなしかあっても2回まで)により3~5万人の市民社会を市民自らが統治していた。都市国家の方針は民会での議決に委ねられていたとのこと。つまり今の代議制民主政とは似て非なるものといえ、しかもマケドニアが登場し、アテナイが没落しつつあるときまで続いていたという。フィンリーの「行き先を決めるのはこの私だ」ほど、民主政の本質を言い表した言葉はないだろう。極めて読みやすい良書。2022/10/29
樋口佳之
66
本書の大部分は、この数年来、東京大学文学部の講義で話してきた内容にもとづいている。古代ギリシア史をめぐる内外の研究は、この二〇年ほどでいちじるしく変貌した。二〇二二年八月(あとがき)/かつて世界史なんかで学んだとしても、も一度読んでみないとと思ったし、確かにあやふやな記憶は整理され更新されたと思います。/古代アテナイ人がもし今日の議会政治を目にしたならば、それを…極端な寡頭政と見なすであろう。彼らにとって統治の主体とは代議士ではなく、市民…/「順ぐりに支配し、支配される」/ 分かち合う事への矜持。良き2022/11/11
venturingbeyond
41
ポリスにおける民主政の実態を、その成立から崩壊への経過の中に描き、古代ギリシア人の"way of life"そのものであった点が、様々な根拠に基づき論証される。また、民主政を衆愚政と見なす観点が歴史的にどのように形成され、現代に至るまでその評価を歪めてきたかについても詳しく語られ、自らの時代や社会の価値観を歴史的事象の評価に投影する過ちが、ここでも再演されていたことが論じられている。官僚制不在、代表制否定、自己統治の貫徹など、現代と似て非なるボリスの民主政の核心について、適切な理解をもたらしてくれる良書。2022/12/07
yutaro sata
33
東浩紀さんがおすすめしていたので、読んでみました。古代の民主政というのが、知識人のフィルターを通して大分ゆがめて伝えられていたんだな、というのがよく分かりました。政治には当然専門的な処理が必要になる訳だけど、私たちが生きている場所の話なんだから、舵取りをするべきなのは普通に暮らしている一般の人々なんじゃないか、という精神は、現代でも引き継いでいく必要があると思うと同時に、何で今現在の民主主義と呼ばれるもの、政治と呼ばれるものはこんなに遠く感じるのだろうという長年の疑問がまた自分の中でより重要になりました。2022/12/31