出版社内容情報
教員七年目、松本サリン事件の現場から近い高校に転勤した著者が生徒たちと模索した教育実践、歴史総合の授業を充実させるための作戦(方法)を経て、学習指導要領の内容とはかなり異なる授業プラン、「世界史の学び方一〇のテーゼ」まで。国民国家とは何かを掘り下げ、世界史とは何かを探究し、自分を磨く特別授業。
目次
第1講 私たちの誰もが世界史を実践している
第2講 世界史の主体的な学び方
第3講 近代化と私たち
第4講 国際秩序の変化や大衆化と私たち
第5講 グローバル化と私たち
まとめ 世界史の学び方一〇のテーゼ
著者等紹介
小川幸司[オガワコウジ]
1966年生まれ。長野県伊那弥生ヶ丘高等学校教員。世界史教育(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
92
この本は「歴史総合」(18世紀以降の歴史)という科目が高校教育課程に入ったことによって、岩波新書から3冊のシリーズとして出版された最後のものです。前2冊が高校生向けのような感じで書かれていたのに比べて、どちらかというと教える側の先生あるいは研究者向けにも書かれたのではないかと感じられました。歴史研究を含む人々の「歴史実践」には六層構造があるといわれていることからも明らかではないでしょうか。各章の参考文献が今後の学習の理解を深めていくのでしょう。2023/06/24
まえぞう
25
シリーズの締めは現役高校教師による歴史総合の学びかたの具体例です。仰ることは概ねそれであればよいねと思わせますが、日本全国の高校生にある程度レベルがそろった授業をできる先生を手配できるのだろうかという疑問を持ちます。必須科目である以上、どの学校で教えられる場合でもレベルを維持できないといけないのではと感じました。2023/08/16
BLACK無糖好き
18
全国の高校で新科目「歴史総合」が始まったことにより、世界史教育全般について主に教育者向けに書かれたもののようだ。世界史を学習することは、過去から現在までの様々な「叙述された歴史」を検討しながら、「私が叙述した歴史」(歴史認識)を相対化して練り上げていくいとなみだという。六層構造の歴史実践のプロセスとして体系的に提示している。具体的な授業プランの例もある、いいトレーニングになるかもしれないが、教育者にとっても些かハードルは高そう。本書からは多くの気づきも得られ、世界史への向き合い方を考えるいい機会になった。2024/03/13
浅香山三郎
14
「シリーズ 歴史総合を学ぶ」の三冊目。日本史と世界史(西洋史・東洋史)の垣根を近代以降は取り除いて学ばうといふ「歴史総合」といふ科目の設定にさいして、どのような切り口が提示できるかを実践例を交えて論じる。既存の教科書の歴史叙述が、誰の手によるもので、どういふ背景でなされたものかを一旦相対化してみるといふ視点、あるいは、近代化・大衆化・グローバル化といつた事態を、システムのなかで弱者である人々(奴隷・女性・植民地の住民など)からみるとどうなるかといふ視点が提示される。↓2023/10/22
かんがく
13
歴史学の学説史を整理しつつ、高校世界史教員の筆者の実践と合わせて歴史総合の授業の在り方を模索する。シリーズ3冊読み通したが、ここで述べられているような授業を構築するハードルはかなり高いと再認識した。2023/08/18