出版社内容情報
一夜にして一〇万人もの民間人を殺害した東京大空襲。戦災孤児、障害者、PTSDなど、苦難のなかで戦後を生きざるを得なかった多くの人たちがいる。社会の無知や偏見に苦しめられながら、自分たちを切り捨てようとする国に対して救済を求めて立ち上がった空襲体験者たちの闘いをたどり、この国の「戦後」とは何であったのかを問う。
内容説明
一夜にして一〇万人もの民間人が殺害された東京大空襲では、七七年が経った今も被害に苦しむ多くの人たちがいる。社会全体の無知や無関心、偏見に苦しめられながらも、国に対して救済を求めて立ち上がった空襲被害者たちの闘いと、政府や司法、立法の対応を描きながら、この国の「戦後」とは何であったのかを問う。
目次
序章 命を削って訴える高齢者たち
第1章 一〇万人を殺した無差別爆撃
第2章 今日まで続く戦争被害
第3章 民間人差別 国の論理
第4章 「受忍論」と裁判
第5章 立法運動の開始
終章 未完の戦争―当事者が望んでいること
著者等紹介
栗原俊雄[クリハラトシオ]
1967年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、同大学大学院修士課程修了(日本政治史)。1996年、毎日新聞社入社。現在、毎日新聞社専門記者。受賞歴:2009年、第3回疋田桂一郎賞。2018年、第24回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
52
今日3月10日は、東京大空襲から78年目。本やドキュメンタリーなどで、当時の犠牲や悲惨さが取り上げられているものの、民間人の被害者への国からの補償などは、まったく行われていない。読み終わって、イギリス・フランス、またドイツでも民間人に対する補償があるのに、日本で行われていないことには憤りを感じるしかなかった。現在は主権のある国民という存在を、国の所有物のように扱っていた戦前の日本の構造を、戦後も引きずっているということになる。オビにもあるように、私たちはこの国の「戦後」とは何かをしっかり知らねばならない。2023/03/10
nnpusnsn1945
52
東京大空襲により、孤児になった、若しくは後遺症が残った者の補償は行われていない。国が過去に防空政策で国民に焼夷弾を消すよう命じたため、無責任と言えない状況にある。また、アメリカに対する補償は、講話条約の都合によりご破算になっている。孤児となった人々の話は重い。2022/02/28
二人娘の父
14
77年目の3月10日に。東京大空襲は他の大規模な戦争被害にはない特徴をもつ。それは民間人被害者への救済措置が、まったく取られてこなかったことだ。著者の問題意識もそこにあり、タイトルにあるように東京大空襲の「戦後」に焦点をあてることで、日本政府の戦後処理の問題点を鮮明にする。そしてそれが決して終わったことではなく、今まさに問われるべき課題であることが理解される。2022/03/10
みなみ
11
Kindle Unlimited で読了。前段として太平洋戦争前後からの解説かあり、本論の東京大空襲に移る。空襲被害を大きくした国民を逃げられなくする防空法、戦災孤児の悲惨な状況(なんの補償もなく親族に預けられる自助政策のため、ただでさえ生活が苦しい親族に虐められる)など。日本政府はとにかく国民に冷たい。違う本で読んだが、満州移民も空襲被害者と同様に「みんな苦しいんだから」と救済を封じ込められている。誰かが政府相手に補償を求めてそれが成功すると連鎖反応を起こすからイヤなのだろう。2023/07/06
てくてく
9
本書にもインタビューが掲載されている金田さんの戦争孤児としての語りは別の本でも読んでおり、第二次世界大戦をはじめとする戦争で守ろうとしたのはひとりひとりの命ではなく、国民全体でもなく、大空襲の死者さえ被害者を正確に把握することなく隠そうとしてきたこと、戦後、戦災孤児が多数出ていたにもかかわらず、国民としてその子どもたちを国が守り育てようとはほとんどしていなかったことを再度認識した。戦後の被害の正確な把握と補償なくして、国家防衛なんてないだろうと思った。2023/01/19