出版社内容情報
連邦を引き裂いた内戦が,アメリカを奴隷国家から移民国家へと変貌させた.国民創造の一九世紀を描く.
目次
第1章 西漸運動の展開―「西半球の帝国」へ(西漸運動の展開と市場革命;ナショナリズムと「好感情の時代」の政治;ジャクソン政治とデモクラシー;北部改革運動;奴隷制度と南部社会;「帝国」への胎動―テキサス併合とアメリカ・メキシコ戦争)
第2章 南北戦争(連邦の分裂;南北戦争;南北戦争の変質)
第3章 「再建の時代」―未完の革命(南北戦争と戦後改革―「アメリカ国民」の創造に向けて;リンカン大統領とジョンソン大統領の再建政策;共和党急進派による再建計画;再建下の南部社会―解放民の生活と失われた大義;再建政治の終焉)
第4章 金ぴか時代―現代アメリカへの胎動(金ぴか時代の政治と社会;最後のフロンティア―西部開発と先住民の一九世紀史;労働者と農民の運動―「アメリカの夢」の陰影;アメリカの帝国主義のかたち)
おわりに―南北戦争の「終わらない戦後」
著者等紹介
貴堂嘉之[キドウヨシユキ]
1966年、東京都生まれ。1994年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。現在、一橋大学大学院社会学研究科教授。専攻、アメリカ合衆国史、人種・エスニシティ・ジェンダー研究、移民研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
93
米文学、中でも20世紀以前を描いた南部小説の理解を深めるためにこちらを読んでみた。語られるのは19世紀のアメリカ、南北戦争前後の歴史。主に政治史で、奴隷国家から移民国家への変遷と内戦後の南部政策が軸となる。ジョンソン大統領による南部宥和策は有力プランターの分益小作を促進して、黒人のみならず白人の困窮層をも生み出した。さらに北部からの移住者との対立、南部の戦前風潮を正当化する「失われた大義」論が登場。この思想は文学など文化面にも影響したようだ。その論は現在の分断問題にまで波及。内戦が残したものは大きかった。2022/10/22
skunk_c
42
シリーズ2冊目で、19世紀を対象とした巻。タイトル通りアメリカのこの時代に横たわるのが南北戦争で、新書というコンパクトなサイズながら、新しい発見も多かった。南北戦争の戦死者は60万人を越え、アメリカがかかわったその他の戦争のそれの合計を上回っているが、銃弾で倒れた者より病死者の方が多かったとは。現代のトランプ政権を支える白人中心の移民観、フロンティア消滅前に始動していた太平洋帝国化など、著者の『移民国家アメリカの歴史』との重複も少なく、併読するとより理解が深まる。南北戦争の評価も秀逸で、決定版と言えそう。2019/08/10
ぐうぐう
36
シリーズ『アメリカ合衆国史』第2巻は南北戦争の時代を取り上げる。著者が指摘するように「南北戦争は合衆国史における最も大きな分水嶺」となったことが、本書を読むとよく理解できる。ひとつには、奴隷国家であったアメリカが移民国家へと転換していくターニングポイントにこの戦争がなっているということ。とはいえ、リンカンは戦争勃発当初、戦争の目的を連邦の統一回復としており、奴隷制廃止ではなかったという。「もし一人の奴隷も解放せずに連邦を救えるのであれば、私はそうするであろう」とすら発言していたのは驚きだ。(つづく)2021/03/30
ステビア
27
奴隷国家から移民国家へ2024/01/02
サアベドラ
23
新書アメリカ史第2巻。本書は「アメリカ史の分水嶺」と言われる南北戦争を軸とした19世紀を扱う。著者の専門は移民やジェンダーから見たアメリカ史。2019年刊。南北戦争は合衆国史上最大の人的・物質的被害を出した戦争であり、現在でも敗れた南部を中心にこのときの記憶が生き続けている。また、この戦争は奴隷国家から移民国家への転換点でもあり、同時にフロンティア消滅から太平洋帝国建設へと至る膨張主義の始まりでもある。合衆国史の光と影が交錯する、濃密なこの時代を新書一冊に収めるのは大変だったと思うが、その分読み応え十分。2019/10/01