出版社内容情報
メディア環境や世界情勢の劇的な変化、そして戦争に大震災──。この五〇年、「大文字の文学の終焉」が言われる中にも、新しい小説は常に書き続けられてきた! 長らく途絶えてきた「同時代の文学史」に挑む。
内容説明
この五〇年、日本の作家は何を書き、読者は何を読んできたか。「政治の季節」の終焉。ポストモダン文学の時代。メディア環境の激変。格差社会の到来と大震災―。「大文字の文学は終わった」と言われても、小説はたえず書き継がれ、読み続けられてきた。あなたが読んだ本もきっとある!ついに出た、みんなの同時代文学史。
目次
1 一九六〇年代 知識人の凋落
2 一九七〇年代 記録文学の時代
3 一九八〇年代 遊園地化する純文学
4 一九九〇年代 女性作家の台頭
5 二〇〇〇年代 戦争と格差社会
6 二〇一〇年代 ディストピアを超えて
著者等紹介
斎藤美奈子[サイトウミナコ]
1956年新潟県生まれ。児童書などの編集者を経て現在、文芸評論家。『文章読本さん江』で第1回小林秀雄賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
132
文学はどこへ向かう?主に60年代からの小説を解説。超人的な読書量でないとこの本は書けない。戦争にテロ、貧困に右傾化。小説は時代や政治を反映している。売れなくてもこうした本は必要。読むべき作品が多く見つかり参考になった。各作品の紹介は短いが、手軽な新書なのでこれでいい。ただ後半はあらすじを追うだけで文章に瑞々しさを失い退屈。必要なのは文学論。レビューを書く際、「歴史小説」と「時代小説」(まったくのフィクション)の区別には注意したい。読書人にとって待望の本なのにレビュー123件とはもったいない。それが残念。2019/10/15
KAZOO
126
確かにまえがきに書かrrているように「現代の日本文学」などの本がありますがそこでカバーされているのは昭和時代までと言うことで本当に最近の日本文学についてのこのっような本はありませんでした。これを読むと私にとっては殆ど知らない作家さんが多くこの時代をカバーした全集などが出てくれないかと思います。講談社の文芸文庫でも読んでいるのですが追いつきません。2021/09/16
やいっち
94
著者の価値観、好悪がはっきりしているのがいい。明治などの私小説には手厳しい。時代が現代に近付くほど、書き手の年齢が若いほど(というより、著者の年齢に近いほどか)、親近感を以て批評する。明治などのへたれ文士だって苦悩していたと思うのだが。それにしても女性作家も含め、それなりに読んできたつもりだったが、情けないほど読んでいないことを思い知らされた。2019/10/10
harass
91
ひいきの批評家の新書。1960年代から2010年代まで、10年ずつの社会風潮とそれぞれの代表的な小説を紹介する。小気味よく論じていくのはいつもの著者。すでに正統的な文学が怪しくなっている昨今で、文学史、最近のものが中心で、手に入りやすくこの薄さでまとめた本は他に見たことがなく、大学の教科書の定番になるのではないかと。小説好きにもぜひ。購入するつもりで、途中から軽く飛ばしつつ読んだ。反論やツッコミはあるかもしれないが、たたき台として。おすすめ本。2019/02/10
rico
90
ありそうでなかった。ここ半世紀の小説を俯瞰的に論じる。夢中で読み耽ったあの物語、わからん!と放り出しそうになったこの1冊・・・。私自身の本との出会に重なり、もう感無量。当時はわからなかった。作品の1つ1つが、同時代のあのできごとやこの空気感を燃料として生み出されたものだってこと。ああ、もう1回読み返したい作品がたくさん。でも時間がない。読みたい本はどんどん増えてるし、焦ります・・。変化の激しい時代には、カンブリア期の爆発のごとく新しい多様な作品が生まれてきた。コロナ禍はどんな扉を開くのでしょう。2022/02/06