出版社内容情報
防衛省と大学との共同研究に道を開いた安全保障技術研究推進制度。一〇〇億円規模に増えた予算を背景に、大学での軍事研究が本格化しつつある。潤沢な研究費と引き替えに、科学者は何を失うのか。『科学者と戦争』の続編。
内容説明
防衛省と大学との共同研究に道を開いた安全保障技術研究推進制度。発足後わずか三年で一〇〇億円規模にまで増えた予算を背景に、大学での軍事研究がいよいよ本格化しつつある。潤沢な研究費と引き替えに、科学者たちは何を失うことになるのか。全国各地の大学で議論のきっかけを生んだ『科学者と戦争』の続編。
目次
第1章 安全保障技術研究推進制度について(過去二年間の応募・採択の推移;二〇一七年度の一一〇億円の予算 ほか)
第2章 日本学術会議の態度表明(日本学術会議の会員選出法の変遷;「安全保障と学術に関する検討委員会」の議論 ほか)
第3章 軍事化する日本の科学(進行するさまざまな軍事協力;軍事大国への道 ほか)
第4章 研究者の軍事研究推進論(デュアルユース論について;自衛論について ほか)
終章 「国家安全保障戦略」と科学技術政策の関係
著者等紹介
池内了[イケウチサトル]
1944年兵庫県生まれ。総合研究大学院大学名誉教授、名古屋大学名誉教授。専攻は宇宙論・銀河物理学、科学・技術・社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zoe
17
勿論、戦争は反対です。研究は自由でなくてはなりません。科学者には、倫理感、分別が必要です。一般的に表立って軍事研究をする方はいないが、する場合の釈明としては・デュアルユースだから仕方ない・自衛の為に仕方ない・研究費のために仕方ない、となる。自由に発表出来ない、博士論文が特許考慮期間限定で一部黒塗りというという事を問題にしているが、軍事利用でなくても特許に影響があるなら黒塗りで進められる分、恵まれてるのではと、民間としては思う。黒塗りでしか発表出来ないスケジュール管理の問題としか感じないかも。厳しいけど。2024/01/28
coolflat
17
大学等の研究者の形状研究費はほぼ枯渇し、今や競争的資金を獲得しなければ科学研究を続行することが困難になっている。競争的資金は限られた分野や研究者に集中し、多くの研究者には配分されず彼らは研究不足にあえいでいる。ならば、たとえ軍からの資金であろうと望む研究者が出てくるのは当然である。それを著者は「研究者版経済的徴兵制」と呼んでいるが、そもそも日本の高等教育への投資が少ないこと、「選択と集中」という真に科学を育てる方向とは正反対の政策であること、などの理由により政府・財務省・文科省の施策に主たる原因がある。2019/10/06
香菜子(かなこ・Kanako)
7
科学者と軍事研究。池内了先生の著書。科学者や研究者は、人類の未来のため、地球の未来のためになる研究に邁進するべき。それが科学者や研究者の使命。科学者や研究者の使命は軍事に利用できる研究をして、戦争に勝つことに協力し、殺人行為を幇助することではない。池内了先生の科学者や研究者としての価値観に共感しました。2018/01/02
nnnともろー
6
科学の軍事化・大学の軍事化を着々と進めている安倍政権。現状に警鐘を鳴らす好著。著者のような方に期待するしかない。2018/02/01
Mealla0v0
2
『科学者と戦争』続編。基本的な主張に変化はないが、デュアルユース政策についてはより詳述されている。技術はデュアルユースであり、民生利用/軍事利用の区別はつけられないという言説に対し、池内は、制度論的に両者は区別可能だとする。軍からの資金提供による研究は一切、最終目標が軍事利用であるため、それらは軍事研究である。近年の日本国家は、大学改革を通じて研究予算を減額し、政府の要請する研究に予算を与えるという仕方で大学をコントロールしてきたが、その目指す先には軍産学官複合体があるという。抵抗をどう組織するかが課題。2019/08/17