出版社内容情報
近代世界のなかで存亡の危機に直面しながらも、妥協と自己変革を遂げていった清朝。そこにあった苦しみや迷い、努力や挑戦とはどのようなものだったのか。18世紀末から日清戦争開戦前夜までの歩みをいきいきと描く。
内容説明
いったんは存亡の危機に直面しながらも、近代世界のなかで自己変革を遂げていった一九世紀の清朝。そこにあった苦しみや迷い、努力や挑戦とはいかなるものだったか。何が体制の立て直しを可能にしたのか。その矛盾に満ち、しかも創造的な過程について、統治や社会の動向、周辺部の状況などもみながら、多面的な世界を生き生きと描く。
目次
第1章 繁栄のなかにはらまれた危機(清朝の隆盛;繁栄と紛争;統治再建の時代;アヘン戦争)
第2章 動乱の時代(太平天国;連鎖する反乱;第二次アヘン戦争;西洋との協調・対抗)
第3章 近代世界に挑戦する清朝(明治日本と清朝;ロシアの進出とムスリム反乱;海外移民の展開)
第4章 清末の経済と社会(経済の活況;清末社会の動態;地域社会の再編)
第5章 清朝支配の曲がり角(激化する国際対立;学知の転換;清朝の終幕にむかって)
著者等紹介
吉澤誠一郎[ヨシザワセイイチロウ]
1968年群馬県沼田市生まれ。1991年東京大学文学部卒業。同大学院を経て、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部准教授。専攻は中国近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
134
愚息のレポートをサポートするために、読みました。浅田次郎の小説等で、この時代の状況の知識はありますが、大学のまっとうな教授が書いた歴史書は初めてです。欧米列強および日本に侵略され、死にたいでありながら、長く生き延びた超大国の様子が良くわかりました。近未来、中国が実質ともにNo.1の超大国になった時に、過去に自国を侵略した欧米諸国および日本に対し、復讐に走るということはないのでしょうか?2018/01/04
KAZOO
106
シリーズの2巻から読み始めましたが、この第1巻はさかのぼって清の後期の時代19世紀の状況が書かれています。清もそのまま崩れ落ちるのを待っていたのではなく、かなりな人材や皇帝も出ていてアヘン戦争に対応したりしていたのですがやはり大きすぎたのでしょう。地方では内乱が起きたりして統制が効かなくなってきています。その状況をきちんと説明してくれていて、ローマ帝国の衰亡の歴史と比較すると面白い気がします。2016/01/22
崩紫サロメ
29
『天津の近代』で地域史からの視点の可能性を、『愛国主義の創成』で中国ナショナリズムの形成を描いた著者による初の新書。再読して改めてそれらの成果が活かされたコンパクトながら重厚な入門書。アヘン戦争・太平天国の時期にあたる時代を扱うが、この時期は現在に至るまでの内陸部と沿海部の格差が生まれた時代である。馮桂芬の地方行政改革論、上海租界の形成など、各地の動きを具体的に取り上げて清朝の機能不全を描く。「おわりに」が『愛国主義の創成』のダイジェストにあたり、興味を持った人はそちらを読んで欲しいと思う。2021/10/01
しんすけ
19
阿片戦争と太平天国で中国国土が揺れていた時、清朝政府はどのような視点に立っていたかに関心を抱かせる。 陳舜臣が遺した作品はそれに触れているが、庶民とくに商人たちの動きに視点を置いているので、物足りなく感じていた。 清朝政府を理解するには、本書のようなシリーズものでは最初から無理だとも思っている。それでも読み始めたのは、本書をきっかけに参考文献を辿れば少しは形が観えてくるのではないかと考えたからだ。 一つの時代を理解するには本書のような概説でなく個人に絞った列伝風のものが印象を深くするのでなかろうか。2020/11/14
かんがく
15
列強や日本と対峙する清国。アヘン戦争で弱体化したと言われるが、その後も辛亥革命まで残り続けた清の近代化が描かれている。文化や社会についての記述も充実しており、日本史で学ぶのとは別視点で見れて面白かった。2019/08/05