内容説明
一八~一九世紀にかけての革命の時代、パリは激増する人口、都市騒乱の頻発で危機的な状況を迎えていた。王権・教会が弱体化するなかで、近代的な都市基盤や治安体制はどのように創られたか。セーヌの河岸・橋・港の整備、パリ警視庁創設、共同体の変容などについて述べながら、近代的な統治システムの形成過程を明らかにする。
目次
第1章 王権のポリスとパリ民衆
第2章 政治化するパリ社会
第3章 「機動的」ポリスの発展
第4章 セーヌ川・都市改造・公衆衛生
第5章 炸裂する都市
第6章 叛乱するパリ
終章 帝国の首都へ
著者等紹介
喜安朗[キヤスアキラ]
1931年東京に生まれる。1960年東京大学大学院人文科学研究科修了。専攻はフランス近代史。現在、日本女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おりん
23
19世紀のパリの児童労働、民衆の生活、工場法について知りたくて手に取った一冊。パリの警察機構の発展に焦点を当てている。警察についてだけでなく、時折民衆の生活も垣間見えてまあまあ参考になった。セーヌ川周辺が非常に栄えていて人がごった返していたこと、下水道の整備が19世紀半ばに行われたこと、貧民層の間でコレラが大きな脅威になってたこと、非営利団体であるアソシアシオンやセルクルの存在、都市の発展に従い薄れてくる近隣住民の結びつきと警察機構の強化など、知らない知識が沢山あり参考にもなった。2019/09/01
ラウリスタ~
9
喜安さんの他の本に比べると、こちらは警察機構の再編に重心が置かれている。革命期以前のパリでは、街区ごとに警視が置かれ、その任務は犯罪捜査というよりも、近所トラブルを合議によって調停する役割が主だった。民衆の騒乱などには無力。19世期には治安判事が調停者の役割を担い、警察は「ポリ公」として批判的言説の的。また、地域密接ではなく、中央集権的組織へ(シテ島の警視庁)。民衆にとって「調停者、助言者、打ち明け話の相手」から、「単なる警吏」へと転落する。「国民兵」(親方、商店主たち)がそれに代わり、街区の有力者集団へ2020/09/07
kaizen@名古屋de朝活読書会
4
岩波新書愛好会】王政、宗教、運河という大規模な視点を提供。 フリーメイソン、ナポレオンなどの政治的な視点もある。 国王の小麦という食料に関する話題もある。 シャンソンと集団という芸術に関する話題もある。 それでも、生活観がないのはなぜだろう。 パリのシャンゼリゼ通りは、世界の文化の中心だと感じた。 世界の文化の中心になるためには、近代にその基礎があったはずだ。 何がパリをそうさせたのかの裏を取れるような情報も掲載して欲しい。2010/03/09
シャル
4
パリが近代に向かうにあたり、どう治安を維持しようとし、変化していったのかを解説していく一冊。特に市民とポリスの関係の変化に焦点が強く当てられており、増え続ける人口に対して常に苦戦し続ける様が印象に残った。人と人との関係の変化や都市の規模、権力者の変化に合わせて、ポリス自身も市民の中から市民の監視者へと変容し、民衆の蜂起とその鎮圧にあたったのがアルジェリアで活躍した軍人達であり、アルジェリアへの移民というという解決策は、近代都市とはなにかということを考えさせられる。2012/03/14
おらひらお
3
2009年初版。近代都市論を統治の視点からアプローチした一冊。棄民的移民政策もあり、いろいろと考えるところもありました。2021/11/27
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- 世界史 全3巻