岩波新書 ブータンに魅せられて

今枝 由郎【著】

岩波書店（2008/03発売）

• サイズ 新書判／ページ数 191,／高さ 18cm
• 商品コード 9784004311201
• NDC分類 302.258
• Cコード C0236

内容説明

「国民総幸福」を提唱する国として、たしかな存在感を放つブータン。チベット仏教研究者として長くこの国と関わってきた著者が、篤い信仰に生きる人びとの暮らし、独自の近代化を率いた第四代国王の施政など、深く心に刻まれたエピソードをつづる。社会を貫く精神文化のありようを通して、あらためて「豊かさ」について考える。

目次

１章　遥かなるブータン―雲上の国をめざして（ブータンとの出会い；インド国境を越える）
２章　仏教が息づく社会―ブータンでの暮らし（首都ティンプに住む；新しい国立図書館を建てる；「拝む」ことと「鑑賞」すること；目に見えるもの、見えないもの）
３章　陽気に、おだやかに生きる―ブータンの人びと（恩師ロポン・ペマラのこと；ブータンの時間；素描―ブータン人気質；第四代国王とブータン社会）
４章　ヒマラヤが聳え、雨雪が降り、森林が茂る限り―独自の近代化への挑戦（国民の利益が最優先；伝統文化の位置づけ；豊かな森林を守る；上からの民主化；国際社会のなかで）
終章　ブータンはどこへ向かうのか―「国民総幸福」という理念（人間の価値を重んじた発展を；精神の文化を考える）

著者等紹介

今枝由郎［イマエダヨシロウ］
フランス国立科学研究センター（ＣＮＲＳ）研究ディレクター。東洋仏教史（とくにチベット仏教史、ブータン史、チベット歴史・文献学）。１９４７年愛知県生まれ。大谷大学文学部卒業。フランスに渡り、パリ第７大学国家文学博士号取得。１９８１‐９０年ブータン国立図書館顧問としてブータンに赴任（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[ＳＡＴ(M)]

以前、海外でチベットのお坊さんのお話を聞く機会があり、その時に「デザイアーをコントロール」することが大切だと言っていたことが印象に残っているのですが、そういったというチベット仏教の教義を一国単位で体現しているのがブータンなんですね。無理やりにでもニーズを引きずり出し新しいものを市場に送り込んでゆくのではなく、「本当にそれって必要？」という問いのもとで取捨選択の上で、文明の利器を取り入れるのがブータン式。図書館＝宗教施設というのが一番の驚きでした。疲れているのか、幸福の国に惹かれる今日この頃です（笑）

2017/06/18

[佐藤一臣]

著者がようやくブータンへとたどり着くまでの紆余曲折が面白かった。数年越しで諦めていた頃に突然国立国会図書館の顧問になってほしいという依頼はびっくりでした。第四代国王の統治はなんだか素晴らしいみたいです。ブータンの「国民総幸福」がGDPを手段の一つと捉えるのはその通りと思いました。ブータンが第五代国王の元で民主的に「伝統・自然の保持」と「経済の繁栄」を両立させることができるのか期待して読みました。

2016/07/07

[コニコ@共楽]

龍の国として知られるブータン。前から訪れてみたい国の一つです。12年前の本ですが、その国に息づく伝統文化は今もこの本から伺い知ることができるだろうと思います。今は若い第五代国王が治められている国ですが、先代の長期的な業績や崇高な理念ー人生の充足という尺度ーに魅せられました。また、ブータンの女性が母系性社会の名残の中で経済的に自立意識が高いことも知りました。はたして今のブータンがどういう変貌を遂げているのか、はたまた変わることなくいるのか、いつか行ってみたい国です。

2020/03/17

[壱萬弐仟縁]

幸せなブータンの書籍は増えた。本書は、GNHの中身を教えてくれる。国立図書館には目録がないという（４９頁～）。仏教の教えである、師資相承で先生が弟子に授けるものなのだから。昨日の富士講のような情報から、改めて宗教といえども、ルールを制度化していった歴史があるのでは、と思える。こういうふうにしましょう、と先人が決めた時期はあったはずでは。幸せの条件として、穏やかさがある。ラスキンは穏やかな経済を『この最後の者にも』で指摘（伊藤邦武氏）。ブータンにあるシステムに思える。仕事は人生の半分の価値観（８９頁～）。

2013/07/06

[pocco＠灯れ松明の火]

ﾜﾝﾁｭｯｸ国王が来日した数日間で、あっという間に日本は笑顔を貰い、癒された。あの観光の様子だけで日本中に幸福を与えた国王。国王が提唱する「国民総幸福」とは？26歳で王位を継承したブータン王国とは？

2011/12/26