出版社内容情報
「静けさにみちた世界 愛するふるさと/わたしのウクライナよ。/母よ、あなたはなぜ/破壊され、滅びゆくのか。」理不尽な民族的抑圧への怒りと嘆きをうたい、ウクライナの国民的詩人と呼ばれるタラス・シェフチェンコ(1814-61)。帝国ロシアに対する痛烈な批判、同郷人への訴え、弱者に寄せる限りない慈しみが胸に迫る一〇篇。
内容説明
「静けさにみちた世界 愛するふるさと/わたしのウクライナよ。/母よ、あなたはなぜ/破壊され、滅びゆくのか。」理不尽な民族的抑圧への怒りと嘆きをうたい、ウクライナの国民的詩人と呼ばれるタラス・シェフチェンコ(1814‐61)。帝国ロシアに対する痛烈な批判、同郷人への訴え、弱者に寄せる限りない慈しみが胸に迫る10篇。
目次
暴かれた墳墓
無題“チヒリンよ、チヒリンよ”
夢(喜劇)
ゴーゴリに
偉大なる地下納骨堂(神秘劇)
ナイミチカ
カフカーズ
死者と生者とまだ生まれざる同郷人たちへ
三年
遺言
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
ウクライナの国民詩人の第三作品集『三年』を訳したもの。この時勢下だからこそ出た一冊で、内容も読んでいると過去と現在のウクライナが二重写しに思えるよう。冒頭の「暴かれた墳墓」や「偉大なる地下納骨堂(神秘劇)」「遺言」に特にそれが顕著だけど、大国の横の小国の悲哀というか亡国の寂寥感が全編に満ち満ちたものばかり。中にはウクライナの知識が無いと難解なものも多いが、解説がそこを上手い事フォーローしてくれているのはありがたい。現在のウクライナの状況が帝政ロシア、ソ連と地続きである事を知れるので、現在是非読むべき。2022/10/28
藤月はな(灯れ松明の火)
58
ウクライナで最も有名な詩人、シェフチェンコ。ウクライナ侵攻がなければ、この詩集は出版されなかったのかもしれない。ウクライナの風景への描写は絵画のように精密だが、意外と苛烈な詩である。そこには祖国を隷属に置いて蹂躙する帝国ロシアや日和見で油断のならない周辺地域、それに屈する国民の弱さへの不信と怒りが迸る。しかし、詩人として身を立てられたのはロシアで勉学ができたからだという事実故に詩人は葛藤し、揺らいでいる。それを踏まえるとこの詩集で自分を含めて「人間」は信頼していないが「国」は愛していると高らかに謳っている2022/12/04
Koning
45
この時期だからこそ出たと言って過言ではないと思うけど、岩波文庫ですらこの時期にならんと出なかったほど日本におけるウクライナの印象が薄かったという事にほかならない。シェウチェンコ(ここでは今まで使われていたシェフチェンコにしたと訳者あとがきにある)。帝政ロシア時代にサンクトペテルブルクでウクライナ語による詩作を発表もアカデミーにいたウクライナ語をロシア語の方言だろというアレな攻撃でずっと発禁だった。この文庫は三年という長らく発表すらされなかった手稿から十編を選んだ抄訳。2022/10/23
だまし売りNo
35
ウクライナの詩人の詩集。ロシアに支配される苦しみが深い。2022/11/22
風に吹かれて
22
10篇の詩が訴えるものが力強く、そして哀しく迫ってくる。ウクライナの詩人シェフチェンコ(1814-61)の詩ほど叫びに満ちた詩を読んだことがないと思う。 ここに描かれているのは現代ではない。19世紀なかば、ロシアとポーランドに弄ばれ悲惨な人生を生きているウクライナの人々。以前から、以後も、悲惨な生を生きるしかないウクライナの歴史の断片を切り取ったかのように思える。悲惨は、当時のみならず、過去にも、そして2023年の今も厳然としてある。 →2023/02/06