岩波文庫
シルトの岸辺

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  • サイズ 文庫判/ページ数 544p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003751299
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

著者最大の長篇かつ最も劇的な迫力に富む代表作。1951年度のゴンクール賞に選ばれたが、グラックは受賞を拒否、大きな話題を呼んだ。「この小説は、その最後の章まで、けっして火ぶたの切られない一つの海戦に向かってカノンを進行する」―宿命を主題に、言葉の喚起機能を極限まで駆使し、予感と不安とを暗示的に表現して見せた。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やいっち

79
ブッツァーティ作の『タタール人の砂漠』 (岩波文庫)のカフカ的不条理を彷彿させるが、あのいい意味での素っ気なさを詩情溢れる情景描写や心理描写で、人の手にはどうしようもない運命の潮流に流され、避けがたい破局へ向かっていく様を丁寧に描いている。それなりに小説を読んできた吾輩だが、この味わいは初めて。年初からこんな作品に出合えて幸せである。知る人は知っているのだろうが、我輩には全く未知の作家で、まさに発見と言える。自分の真贋を観る目を褒めたくなる。2020/01/23

syaori

60
物語の舞台は東方貿易によって繁栄したオルセンナ。現在はその過去の栄光の夢にまどろむ大国。物語は最初から不安に満ち、「何一つ動かない」永い平和のなかで人々は海を越えてやってくる破滅と誕生の予感を孕んだ嵐への期待と何事も起きてほしくないという望みに引き裂かれていて、「何も起こらない」物語の奥底で蠢く人々の倦怠と、終末と再生への期待と恐れにひどく惹き付けられました。この生と死の予感を塗り重ねてゆく物語が示す死と表裏一体の生の輝きに魅了されたのは、自分もまた不穏な世界の平和にまどろんでいるからなのかもしれません。2019/01/08

たま

24
1951年発表のジュリアン・グラックの小説。数十年前集英社版で読んだものが2014年に岩波文庫に再録されており再読した。訳者は同じ安藤元雄氏で翻訳が素晴らしい。ヴェネツィアとおぼしき都市オルセンナの滅亡がテーマで廃墟のイメージが多く、新古今に通じる美意識が通底し、訳者はワーグナーの楽曲に譬えている。複雑巧緻な比喩を駆使して予感、宿命、時機成熟等の抽象を喚起する。具体的事物の軽視や支配階級の驕慢に違和感も覚えるが、荒涼たるシルトの砦、降誕祭の町の群衆、夜の海の航海等のゴシックロマンス風の描写は忘れがたい。2021/02/24

ラウリスタ~

17
なんだこれ、めちゃくちゃ面白い。500ページ超えの小説を一日で読むなんて、数年ぶりじゃないかな。『タタール人の砂漠』と妙に似ている。イタリアのような架空の場所で、時代もルネサンスと現在とが混在したような摩訶不思議な舞台設定。予感予感&予感。でも、なにかが起ころうとしている。そして、突如眠っていた国で大きく動き始め、崩れ始める。老年を迎えたある国家が、老衰によって死ぬぐらいならと自殺行為へと嬉々として身を投じる。姿の見えぬ権力が、最後には一人の人間になる。何も起こらないわけではない「何も起こらない文学」。2014/03/19

zumi

11
「なんかいるなー、でも本当にいるのかなー、でもいるんだろうなー」ーー約三百年間、「名目上の」戦争状態が続いたため、本当に敵がいるのか、あるいはいたとしても攻めてくることはないだろうというどこか楽観的な雰囲気の鎮守府がメインの舞台。まあ、それが崩れるっていうので「近接の原理」が最大限に活用されているのも面白いが、戦争が近づき「静→動」が一気に爆発するのも良かった。個人的には主人公が海図を眺めて、自分は秘密の支配者であると感じる場面が好み。ヴァネッサ、彼女の知的でやや意地の悪いところが魅力的なんですね...2014/03/12

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