出版社内容情報
いかなる筋を尋ね来つらむ――夕顔の忘れ形見の玉鬘は初瀬観音の加護により、源氏に引き取られ、男達の心をかき乱す存在になってゆく。彼女を待ち受ける運命やいかに? 精密な原文と注解による「玉鬘十帖」を収録。(全九冊)
内容説明
いかなる筋を尋ね来つらむ―夕顔とかつての頭中将の遺児である玉鬘は、初瀬観音の加護により、源氏に引き取られ、男たちの心をかき乱す存在となってゆく…。数奇な運命に翻弄される彼女の落ち着く先は?「玉鬘十帖」(玉鬘から真木柱)を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
87
再読。嘗ての恋人である夕顔の面影を残す玉鬘。どうやら男嫌いに見える彼女は不本意にも男性の注目を引いてしまう。ならば、彼女は男に逃げるばかりの無力な女なのか。しかし、義理の父親としての立場を利用して懸想を伝えてくる光源氏への困惑やそうした行動への嫌悪を歌で伝えたりする姿から見ると、彼女はちゃんと男が押し付けてくる不条理に抗う女性であることが分かってくる。そして作者も光源氏の下衆な言動に苦言を呈したりしているのが註で気づける。初読の時に気付けなかったことが歳を取ってから気づけるようになると本当に嬉しいですね。2018/10/13
NAO
73
かつて思いを寄せていた夕霧とかつての友人内大臣(頭中将)の遺児玉鬘を中心とした玉鬘から真木柱までの10巻分。実の父親がいるのにその父親には存在を隠して勝手に自分の屋敷に連れ帰る源氏の身勝手さ。他の男たちに彼女の存在をほのめかし、帝には蛍の光で彼女の姿を浮かび上がらせて恋心を煽っておきながら実は自分が一番彼女を狙っているという相変わらずの好色ぶり、無軌道ぶりには、ほとほと嫌気がさす。源氏だけでなく、内大臣、黒髭の大将と、ほとほと男たちの屑ぶりが目に付く巻だった。2018/10/31
syaori
61
玉鬘~真木柱の玉鬘十帖を収める巻。舞台となるのは前巻末に築造した六条院。四季を象徴する四つの町にそれぞれ女君を置く院の生活は、管弦等の遊びはもちろん、日々の生活に至るまで雅びやかで美しく、その欠ける所のない姿に陶然となってしまいます。しかし作者はその結構が、玉鬘や明石の御方を何となく不快に思う紫の上の心や花散里に自分の分を弁えさせる空気、すぐ春の御殿に戻る源氏への明石の御方の不満など女君たちの言葉にできない鬱屈の上にあることも示します。それが噴出した姿を、髭黒大将北の方の惑乱に見るように思いながら次巻へ。2021/04/12
金吾
27
玉鬘をめぐる男たちの争いです。髭黒大将の強引な攻めが功を奏しましたが、当時もそうなのかなと思いました。源氏はやや気持ち悪いです。2024/01/04
tsu55
18
玉鬘から真木柱まで。 自分の意思とは関係なく、運命に翻弄される美貌の姫君玉鬘、意に沿わない相手である髭黒大将と結ばれる羽目になる。実父が内大臣で養父が源氏の太政大臣(源氏)、そして夫が大将という最強の後ろ盾がついたわけだけれど、やっぱりタイプじゃない男と結婚するのは嫌なんだろうな。 ところで、この玉鬘と対比されるもう一人の姫君近江。貴族の娘としての教養や品位に欠けるということで、散々な書き方をされているのだけれど、今風に言うと天然キャラで、なんだか可愛くて、ファンになってしまった。2020/03/18