内容説明
迫害、拷問、殺戮が、宗教の名によって横行した十七世紀ヨーロッパ。信仰を異にする人びとへの「寛容」はなぜ護られるべきなのか?本書は、この難問に対するロックの到達点。政治と宗教との役割を峻別し、現世の利益を守るのは為政者の任務だが、魂の救済は宗教に委ねられると説く。後世に多大な影響を与えた政教分離論の原典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
105
これは、ジョン・ロックが最初にかなり影響が大きいということで匿名でしかもラテン語で書いた文書です。さらにそれを英訳した人がいてそれを原本にしているようです。すべての人への説教あるいはメッセージという感じです。非常にわかりやすい言葉で政教分離がいかに必要かということを説いています。丁寧な訳注や解説があり参考になりました。2018/10/11
壱萬弐仟縁
30
1689年初出。オランダにおいてラテン語で出版。後、オランダ語とフランス語に翻訳(9頁)。絶対的な自由、公正にして真なる自由、平等で不偏不党の自由、これこそ、われわれが必要としているもの(10頁)。何人(なんぴと)も、個人であれ教会であれ、ひいては政治的共同体でさえも、宗教を理由として、お互いの政治的権利や現世的物品を侵害する正当な権原ももっていない(41頁)。権原といえば、アマルティア・センの作品にも出て来るので、違いを把握してみたい。すべての人が、自ら誠実に探究し、思索、研究、調査、自らの努力によって2018/10/27
lily
25
寛容さを持って精神は自由であるべきということは、宗教分離論だけでなく、学校、会社、家族にも通ずること。精神を脅かす者、攻撃してくる者には、本書を贈ってやるといい。18世紀に帰れ!ってね。2019/06/19
松本直哉
24
政治は民の現世的利益に、宗教は魂の彼岸的救済に、それぞれ専念して互いに介入しないという政教分離を説く。しかしそんなにきれいにすみ分けられるものだろうか。共同体に生きる以上どんな人も政治的人間たらざるをえず、そこで宗教的自己主張をすれば、どんなに無害に見えても軋轢を生む(イスラムのスカーフでの登校、宗教的良心に基づく兵役拒否)。さらに、宗教は、もしその名に値する存在意義を持つならば、政治の不正義があればそれを黙過せず、批判し抵抗するのが当然で、そうでなければただの気持ちのいいアヘンにすぎないのではなかろうか2022/04/14
CCC
16
異端を認めようというわけではないが、危険がないなら力で排除するのは間違いだ、という話。しかし信じる自由には寛容さを認めても、信じない自由は認めないのは時代の限界か。あるいはロックの限界か。無神論者に誠意が持てるとは信じられなかったらしい。キリスト教が前提の寛容論。話に聖書を持ち出す部分も結構多かったのが印象的だった。2019/12/20