出版社内容情報
「絵画には規範は存在しない」--国王寵愛の画家として頂点を極めたゴヤ。だが病に聴力を失い、革命と戦争に亡命を余儀なくされる。《裸のマハ》他の衝撃的な作品を次々に描いた画家は、近代へと向かう激流のなかで、何を求めたのか。ゴヤ全生涯の手紙は、無類の肖像画家が遺した、文章による優れた自画像である。(全二冊)
内容説明
「絵画には規範は存在しない」―国王寵愛の画家として頂点を極めたゴヤ。だが病に聴力を失い、革命と戦争に亡命を余儀なくされる。近代へと向かう激流の中で、画家は何を求めたか。ゴヤ全生涯の手紙は、無類の肖像画家が遺した、文章による優れた自画像である。
目次
5 精神と肉体の危機を超えて 一七八九‐一七九四年
6 画壇の頂点に立つ―成熟する絵画と批判精神 一七九四‐一八〇八年
7 戦争と革命、迫害、そして亡命へ 一八〇八‐一八二八年
その後のゴヤ家・レオカディア家、そして家系断絶
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
75
上巻は、あくまでゴヤファンやゴヤの研究者の資料的価値以上の書簡は乏しかった。翻って下巻は、特に聴力を失ったり、子供の病気に心を痛めたり、貴族らの寵愛より画家としての矜持を貫く姿勢など、極めて人間的。但し、何処か自分はゴッホの書簡集的な文学性を期待していたようで、少しがっかり。時代的にまだないものねだりだったかもしれない。手紙の中から、ゴヤのあの絵画を浮かべるのは絵画の門外漢にはやや難しかった。 2021/11/13
藤月はな(灯れ松明の火)
68
出世街道を次第に加速し、突き進んだ前巻に対し、ゴヤの失聴と地位の不安定化、戦争による亡命、経済的困窮、死が伺えるのがこの巻である。スペイン独立戦争での凄惨な光景がプラド美術館への名物「黒い絵」シリーズへと繋がる。しかし、遺言書部分では尽くした愛人、レオカディアの地位の低さに対し、血の繋がった身内の冷淡さの落差に唖然としてしまった。後、相棒サパテールへの書簡で陽物や睾丸、尻の穴へのスケッチ、セックス用語が横溢しているので「どうしてなんですか、ゴヤさん!勘繰れというのですか」と思っていたら解説も忌憚なさすぎる2021/07/17
ハルト
9
読了:◎ 「黒い絵」シリーズのような、残虐な絵を描いていて、でも手紙から浮かび上がってくる人柄は、明るく屈託がなく人間くさい。特に親友マルティン・サパテールとのやりとりは、愉快なエロティシズムさえ漂っている。解説にあるように、サパテールとの間の、同性愛的な関係性が、なにに起因しているのかはわからないけれど、そんな開けっ広げな自分をさらせる友がいるというのは、羨ましいことだと思う。サパテール亡き後には、「戦争と革命、迫害、そして亡命へ」となり、聴覚を失ったゴヤにとっては苦しい時代になる。それを思うと切ない。2021/08/27