内容説明
「ローマの歴史の最も華々しい書き手」とタキトゥスが評したサルスティウス(前86頃‐前35頃)。いまに残る二篇の著作は、ローマ共和政の崩壊過程と渦中の人々の経験を克明に伝える。『ユグルタ戦争』は、北アフリカの王ユグルタとローマの激戦を描き、『カティリーナの陰謀』は、カエサルの関与も疑われた国家転覆未遂事件を記す。
目次
ユグルタ戦争
カティリーナの陰謀
感想・レビュー
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KAZOO
105
この本については全然知らなかったのですが結構興味を持って読むことができました。非常にこの分野の本にしては読みやすく(訳がいいのでしょう)、「カティリーナの陰謀」の方は臨場感があるような書きぶりで引き込まれます。すっかり忘れているのですが塩野さんの「ローマ人の物語」もこの本を参考にしているのでしょうか?訳者の解説が非常に参考になりました。2020/01/29
ピオリーヌ
13
私にとって久々の古代ローマ史の古典との対面となる(『ローマ皇帝群像』以来か)。巻末に纏めて訳註があるが、註と付き合わせて本文を読み進めていくのがたまらなく楽しい。どちらかというと、都度訳註があるアエリウス・スパルティアヌス他著 南川高志 桑山由文 井上文則訳『ローマ皇帝群像』の形式の方が読みやすくは感じる。ヌミディア王国のように事実上ローマに従属する関係の場合、「ローマとヌミディアの関係はローマ人自身の表現の中では常にアミーキティア(友好関係)と呼ばれ、2021/02/20
Francis
12
「ユグルタ戦争」「カティリーナの陰謀」の事件名に惹かれて即買いした。この二つの事件は有名で、カティリーナ陰謀はキケローの名前を高めた事件だから。「ユグルタ戦争」の主役ヌミディア国王ユグルタはずる賢い敵手として描かれているが、訳者の解説によればそれは征服者としての見方であり、アルジェリア独立戦争など後世の植民地側の立場からはユグルタは英雄と見られている。「カティリーナの陰謀」は訳者によるとカエサル側の立場から書かれているとの事。立場の違いによる歴史観の相違について考えさせられた。2024/02/12
じぇろポーta
5
傲慢と野心ゆえにローマに反逆しヌミダエ王国を荒廃させた暴君ユグルタ(ユグルタ戦争)。陰謀により国家転覆を図ったカティリーナとその一味(~の陰謀)。サルスティウスは二つの事件を通してローマ社会の分断を描いていく。ヌミダエの人々のローマ人「事業家」への怒り(26章)、ワガ住民の蜂起(66章)等にローマ支配からの「解放運動」的側面を読むことも出来る。勇敢に戦い全滅したカティリーナ軍兵士の骸の中に友人を、肉親を、敵を見出したローマ軍の悲喜こもごもの反応を描いて終わる(陰謀61章)のが勧善懲悪から程遠い余韻を残す。2020/03/03
馬咲
3
ローマの共和政が衰退していくメカニズムを、衰退期の内の大きな2つの事件の顛末を詳細に記し、それらに見られる共通項を示すことで明らかにせんとしている。一方は国外政策、他方は国内の権力闘争を皮切りにして党派対立が鮮明になるが、この時双方が敵陣営をやり込めるために強権的な代表者を擁立しようとし、結局どちらが勝利しようとも共和政から遠退く独裁的な体制を誘致してしまう構図が見てとれる。所々自身のバイアスを示しつつも、党派を越えて政治的問題の構造理解を深めんとする著者の立場に学びたい。2022/06/04