出版社内容情報
仏教諸経典の中でも,日本人の心に最も深い感化を及ぼした浄土三部経(『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』).漢訳には流布本を採用,サンスクリット原典を逐一参照しつつ読みくだし,サンスクリットの翻訳にあたってはわかりやすさを旨とした.最近の研究成果をとり入れ完璧を期した改訂版.上∥無量寿経,下∥観無量寿経・阿弥陀経.
内容説明
中央アジアに発した浄土教は、広くアジア、中国から日本へと伝来してゆくうちにさまざまな変容をとげていった。註・解説では、こうした受容の変遷にも触れ、比較文化論として読むことも可能だ。浄土思想は、それぞれの時代、民族、文化の中に生き抜いた人間の悲願が永遠の真理に浄化されて、いまも日本人の心に深く息づいている。
目次
観無量寿経
阿弥陀経
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
25
仏国土に生れる心:誠実、深く信ずる、善行の功徳を仏国土往生に振り向けてかの仏国土に生れたいと願う心(31頁~)。解説によると、浄土思想とは、仏とわたしとの願いの相即したものの展開。時代、民族、文化の中に生きぬく人間の悲願が永遠の真理に浄化され、実現されていく歴史があるという(259頁)。幸あるところの美しい光景と名づける大乗経典(133頁)。2015/10/04
零水亭
19
「観無量寿経」の「九品」の解説はドキッとします。五逆・十悪を犯した「下品下生」でも救われ、浄土にいくことは出来ますが、菩提をえるには十二大劫を経なければならぬ、と。2023/09/27
加納恭史
16
再読してみると、〈上品上生〉と〈上品中生〉では出家者のことで、上輩の観想つまり第十四の瞑想を終了し、気になっている在家者について、中輩の観想に進む。仏はアーナンダとヴァイデーヒーに告げる、「〈中品上生の者〉とは、生ける者どもの中で、在家信者の守るべき五つの戒律を守り、八つの戒めを守り、五逆罪を犯さず、さまざまな苦しみを嘗めることがなく、この善根を振り向けて〈幸あるところ〉に生まれたいと願い求める者のこと。この人の命終わる時、アミタ仏は、修行僧たちとともに、金色の光を放ちなからその人のところにやって来て・・
かず
15
再読。我が家は浄土真宗ということで、新年最初の本は是非ともこれにしようと心に決めていた。訳文だけだが、どうにか三が日の間に読了することができた。本書は観無量寿経と阿弥陀経を収録している。観無量寿経は、極楽浄土を観想する方法を説明するお経であり、阿弥陀経は極楽浄土の荘厳さを述べた上で、そこに生まれたいと発願することを勧めるお経となっている。私の場合、この世自体が極楽浄土であると思っているので、観無量寿経については特段の感想を持たなかった。阿弥陀経については、p.131からの第17に深く納得した次第である。 2018/01/03
加納恭史
14
やっと「観無量寿経」を検討できる。何と劇的な物語だろうか。本論に入る前に、解説から極楽浄土の世界がインド聖典「リグ・ヴェーダ」などの関連も指摘される。ダルマーカラ・ビクの第26願からナーラーヤナ神の強い力を得たいと発願するが、ナーラーヤナ神とはヴィシヌ神の別名で、浄土教とヴィシヌ神にも関連している。ダルマーカラ(のちの無量寿仏)の師であったローケーシヴァラ・ラージャ(世自在王仏)とはヒンドゥー教のシヴァ神の別名。「カウシータキ・ウパニシァッド」に語られる梵天世界で梵天の王座は「無量の威力」と呼ばれる。2022/01/20