岩波文庫
山猫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 423p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003271612
  • NDC分類 973
  • Cコード C0197

内容説明

一八六〇年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

323
ディランペドゥーサは初読。そもそもこの作品以外には短篇が若干あるだけのようだ。作家自身がシチリアきっての名門貴族の出身で、サリーナ公爵のモデルも彼の曽祖父であるらしい。小説の冒頭は、この公爵家の「ロザリオの祈り」から始まるが、そこに流れる時間は実に悠々たるものであり、物語の時間である1860年のものではない。また、彼らの生活そのものが儀式めいており、ガリバルディを筆頭とするイタリア統一の気運と軍勢の前には、きわめて前時代的なものに見える。彼らの「滅び」もまた霧の中に消えてゆく、そういう種類の美学なのだ。2016/10/17

ケイ

159
貴族はいずれ滅びゆくものだった。プルーストは「失われた時を求めて」において、その事を認めずにお金では買えない洗練さで立ち向かおうとした貴族たちの斜陽と新興ブルジョワの俗ぶりを描いていたが、あれはフランス的なのだろうか。「山猫」では、サリーナ公爵はすでにお金を稼ぐ手段のない自分達がどうなるかわかっていながらも手をこまねいて運命に身を任しているのだが、それがなんとも退廃的な甘美さを感じさせる。ヴィスコンティはこの作品を映画化したそうだが、タンクレーディの美男子ぶりを見えるものにしたかったのではないかと思えた。2017/04/08

のっち♬

122
イタリア統一前年から半世紀に渡って描かれるシチリアの名門貴族サリーナ家の有為転変。設定から著者の出自と重なるが、主人公の一貫した無為な生き方や悠揚迫らぬ態度にも影を感じられる。大空の星への想いが遂げられる晴れやかな最期は、新興貴族や迫り来る乱世との対比を浮き彫りにするハイライト。コンチェッタの残す苦味も強烈。死の影を匂わせつつ華麗で爛熟した生を格調高く、陰影豊かに描ける筆力は非凡。長年スペイン支配の抑圧に晒されてきたシチリア人の気質や態度の変化も克明に記され、惹起されるノスタルジーも人気の一側面と感じた。2022/08/21

nobi

95
天井のフレスコ画の解釈的印象も死んだ兵士の有様も、写実的なキリストの磔刑図のように悉く描いていく。直前に読んでいたのが「枕草子」だったから余計に殆ど野暮じゃないかと思う程過剰で勿体ぶっている、ドン・ファブリーツィオ公爵の愚痴っぽさも娘や甥の恋愛沙汰も古色蒼然とした映画のように芝居じみている、ように見えていた。シチリア王国とサリーナ家の衰亡、自らの老境、それらが渾然となって公爵の嘆息と苛立ちに変わる。ただその退嬰的な述懐は次第に熱を帯びて哲学的思弁にまで達し、思いがけず至福のひとときさえ現れて胸熱くなった。2018/10/21

扉のこちら側

90
2017年32冊め。【260/G1000】山猫を家紋とするイタリアの名門貴族サリーナ家の1860年から1910年にかけての物語。訳者あとがきで『平家物語』が挙げられるのだが、同じ「滅亡物語」と考えるとしっくりくる。イタリア統一運動の狭間の貴族たち、王国軍の敗退と王国の滅亡、新イタリア王国の誕生。主人公の公爵に対する新王国の上院議員への推挙と、時代の移り変わりがドラマチックである。イタリア史も気になってきた。パーキンソン病により「まともな字が書けなくなった」(本人談)中で翻訳に取り組まれた小林氏に感謝。2017/01/14

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